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発芽 ~ワイン醸造の現場から その3~


ブルゴーニュ地方における発芽とエブルジョナージュ作業(2010年4月)


冬眠状態のブドウの樹は、茶色の皮で覆われ、生命感が全く見られない。
厳しい自然の中を生き抜くためには無防備な身体を晒すわけにはいかないからだ。

しかし、3月の暖かい空気を浴びると、木々は樹液を体中に張り巡らすようになる。樹の下に隠れていた小動物たちも、もそもそと外に顔を出すようになる。
冷たく静寂の期間は終わり、今再び、太陽の季節がやってくる…。厳しく寒い季節が終わり、春の日差しが野を照らすと感じたとき、それに呼応して、地上の木々も、緑の芽を一斉に開かせる。

            0 Vogu
            新芽が出た。

Côte de Nuitsで、ブドウの樹に、芽の羽毛のようなものが取れて赤みを帯びてきたのは、4月10日(2010年)位であった。
一般に、南の地方の方が発育が早いので、BeaujolaisやMaconなどの地方はもっと前になるだろう。さらに、Chardonnayの方がPinot Noirより若干、生長が早い。だから基本的にに、 Côte de Beauneの方が、Côte de Nuitsよりも早くなる。

  1 debourrer
  Domaine LaurentのChambolle-Musigny。この連載中、毎回追っている同じ樹の発芽。

しかし、ブドウの成長要因はそれだけではなく、色々な要素が複雑に絡まり合い、年によって変わる。
ブドウの樹の生長速度の要素をまとめてみた。

 - 若い樹の方が生長が早い(しかも、Gormandという樹勢の強さによってイレギュラーに生まれる芽を沢山、生もうとする)。
 - 芽が少ない樹ほど生長が早い(少ない芽に栄養が集中するから)。
 - 地面に近い方の芽ほど生長が早い(低い樹の剪定方法だと、生長は早くなる)。
 - Gourmandの生長速度は遅かったり早かったり、生長しきったり、しきらなかったり、まちまち(しかし、Gourmandは基本的に地面に近いほうに出来やすいので、生長は早いことが多い)。
 - 気温が高い方が、生長が早い。
 - 丘の方が平地よりも生長が早い(斜面は、南>東>西>北の順番)。
 - 基本的に特級から一級、村名、地方名へと生長速度が変わる
 - 台木の種類によって、生長速度は変わる。
 - 前年の収量が低いほど、生長は早い。
 - 樹勢の強い樹ほど生長が早く、多産。
 
あと、これは推測だが、

 - 丘の上の方が生長が早い(太陽に照らされやすい?)。 
 - Guyot(長哨と短哨)仕立ての方がCordon(短哨のみ)仕立てよりも生長が早い(恐らく、短哨の方が、芽がでるのは早いがゆっくり進むので、長哨の方が素早く生長する)
 - 小さい枝の方が大きい枝よりも生長が早い(これは疑問の予知あり)

芽の生長する量についても色々な見解がある

 - Guyot仕立ての長哨ではまず、先端から発芽し、次にその横から下向きではない(上か、左右を向いている)芽が開く
 - Guyot仕立ての長哨は、前年の収量が低ければ(糖分の蓄えがあれば)、綺麗に開くが、高いと根に近いほうの幾つかの芽は開かないことがある
 - Maconのように、扇型にワイヤーにくくり付けられた仕立て方法だと、芽は先端から開かれるが、生長の速度はどれもが一定になるようだ(Maconの造り手情報)
 - Cordon仕立ての樹の芽の生長はバラバラの順番である
 - Pinot Noirは一つの芽に双子型の枝が出やすい

            2 grossir
            どんどん成長中。


 この時期の芽は非常に不安定で、脆く剥がれやすいため、注意が必要な時期である。特に、この時期に雹が降るとブドウ畑は大打撃を受け、収穫量がかなり減ってしまう。
雹だけではなく、害虫も活動を開始し、芽を食べたり、芽に卵を産みつけたりするようになる。畑の管理も大変で、芽が飛ばないように注意して樹の周りを世話しなければならない。
 ブドウの生長の速度と質の鍵を握っているのは、『樹勢(vigueur)』による部分が大きい。『樹勢』の強い樹ほど生長は早く、そして多産である。醸造家は、強い『樹勢』を如何に、ワインの原料たるブドウの房に集中させるかにかかっている。『樹勢』が強いだけでそのまま放っておけば、実以外の葉や茎の部分の生長を優先してしまいかねない。強い『樹勢』からよりより実を生むために、造り手は、さらに余剰な芽を省く作業を行う。これを「エブルジョナージュ(Ebourgeonage)」と呼ばれる作業である。冬期剪定の間に残した芽をとり、ブドウの生長をコントロールする。たとえ芽をすべて残しても、ブドウは出来るが、味わいが希薄なものになってしまう。量と質は決して相容れないのだ。

  4 pendant ebourge
エブルジョナージュ。余計な芽を刈る作業。


 エブルジョナージュの時期、採る芽の量はDomaineによって違うが、冬期剪定と同じくらい、重要な作業である。大体、一つの芽からブドウが1.5個ぐらいできるので、残した芽の量は収穫量に決定的に影響する。Domaine Laurentでは、畑によって芽の量を変えていた。 AOC Bourgogneは短哨に2つと3つの計5つ残す(これは少し特殊な剪定法)。村名クラスで長哨に5~6つ、短哨に2つ残す。一級クラスは長哨に4~5つ、短哨に2つ。特級クラスは長哨に4つ、短哨に2つ。

 枝についた芽で注意しなければならないのが、一つの芽から一つの小枝がでるとは限らないということだ。まれに2つ小枝が分裂して顕われることがある。三つ子や四つ子になったものを見た事がある。これらの双子の枝は、栄養のバランスが悪く、他者の生長の妨げになるため、どちらかを除かなければならない。片方がまだ生長段階まできてなくて芽を出してないということもありうるので、見分けをつけ辛い。さらに、枝に付いた芽だけではなく、イレギュラーにでてくるGourmandも除かなければならない(épamprage)。
Gourmandは昨年残した枝から出ずに直接、本体の樹から出て来るのもので、その芽からまともなブドウがなることはない(品質低下のVerjusというブドウが出来る)。Gourmandは除くにこしたことはないが、Gourmandにも立派な利用価値がある。来年用の短哨用に残すことで、樹自体の高さを下げることが可能になる(下げることは色々な意味で重要で、ワイヤーにくくりつけやすい、上方にできた病気をカットできる、そして、地面の方に近づけることで、栄養の運搬を効率よくできるなど)。

  8 epamprage
  エパンプラージュ。余計なグルマンを除く作業。


 エブルジョナージュの目的は単に芽の数を制限する目的のためだけに行うのではない。伸びて来る蔓の場所を固定し、よりよく葉と実をならすことで、となりの樹との、もしくは同じ樹の中の枝同士の間の競争関係を防ぐ目的がある。密集した畑の中で、伸びる枝を制限することで、太陽光の中りを良くし、風通しを良くする効果がある。つまり、冬期剪定のみでは出来なかった、ブドウとブドウの間の空間確保を、ある程度まで可能にするわけである。良い生産者ほど、エブルジョナージュを行った後の樹の伸びる形はとてもキレイである。



 それにしても、この作業は、非常に足腰にキツい仕事である。座っては立ち、芽を数え、抜き取る…。しかも、樹の前に腰を降ろすや否や、瞬時に芽の数、双子、Gourmandを除くことを考え、実行しなければいけない(ちんたらしてられない、時間との勝負!)。これをしなくても、収穫は出来るし、収穫量が減らないのだから、しないにこしたことはないと思っている造り手もいるだろう…。

良いワインを造る人は、造らない人よりも、多くの苦労をしている。
努力のない所に結果は生まれない。これは間違いのない事実だ。


            6 DRC Avril1
             DRCのMontrachet。4月になっているのにまだこの状態。実は、DRCは剪定を遅めに行うために、まず最初に1月に仮剪定だけをする。その後、本剪定を行うが、いらない芽を多めに切る。

 例えば、DRCのエブルジョナージュはワイヤーに枝を括った後、すぐに行うようである。Montrachetでは下向きの芽を除き、長哨に4-5個しか残っていないし、Romanée-Contiでは双子になった芽を除いて4-6個のみであった。枝が十分に伸びる前の状態でのエブルジョナージュは、雹が降ると非常に危険なため、入念なる天候予測が必要である(幸い、この半月間、雨は一滴も降らず、太陽に恵まれていた...それを知っていたからこその決断だろう)。



  6 DRC Avril2
  DRCのMontrachet続き。芽が出たが、すでに多めに切っていたので、エブルジョナージュをする必要なく、使われる芽だけ出た。枝の先端から2つ目と4つ目が、先に切られたものであることが確認できる。


  7 RC Conti
  DRCのRomanée-Conti。前もって芽を除いていたとはいえ、イレギュラーの芽は伸びる。特に双子状に伸びる芽は、エブルジョナージュの際に除くようだ。最初の二つの芽は双子だったので、片方だけキレイに切った跡がある。


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[ 2018/04/12 18:11 ] 栽培 | TB(0) | CM(0)

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