整枝 ~ワイン醸造の現場から その2~


Bourgogneの整枝作業(3月-4月)


 ブドウの樹の剪定が終わると、次は畑の修復作業が始まる。
 長年使って、腐ってしまった杭や、錆びたワイヤーを交換する作業である。

           bar a mine

 もう一度、すべての畑を回って、土を掘り起す。Bar à mine と呼ばれる鉄棒を地面に突き刺し穴を穿ち、その後で杭を打ち込む。畑によって、地表から地母石(Roche de Mer; 地表下にある土壌の核となる層、Bourgogneの場合は石灰岩)に至るまでの距離が違う。例えば、急斜面の Nuits-Saint-Georges 1er cru Damodes は石灰がごろごろと露出していて、土に穴をあけるだけで一苦労で、杭を打つのはもっと大変。他にClos Vougeotや、Nuits-Saint-Georges Villages St-Julien などといった畑も石灰の層に達しやすい。逆にVosne-Romanéeの特級、Échézeaux に接するChambolle villages En Orveaux は石ころが沢山目に見える割に土は深く、鉄棒を入れる必要がない。だからこういった土壌は表土が深く粘土質である。
 粘土質が多いのか、石灰質が多いのか。隣接する畑でも、地母石に達する深さが違って、Bourgogneの畑のクリマの違いの奥深さが垣間見れる。

           attack

 一般に、石灰の地層が近いほどワインはミネラルに、遠いほどフルーティーになりやすい。それは、ブドウの根が地下水脈を探して伸びる過程において、無機質に富む石灰からミネラル分を吸い、有機質に富む粘土質から果実分を得るからだと思われる。斜面は、土が下へ下へと流出しやすい構成上、表土面積が薄くなりやすく、地母石が露出している所も多い。『Perrieres』 や 『Cras』、『Criot』 など、「石」を意味する用語のつく畑が、すべからく斜面状になっているのは理由があるのだ。蓋し、Bourgogneのワインの個性は石灰(無機質、ミネラル)と粘土(有機質、果実)の配分のバランスにより発生するのである。

 杭を打ち付けると、今度はブドウ樹間のユルくなったワイヤーを張り直す作業に入る。畑の端から端まで、ワイヤーをピンと張ってまっすぐに延ばす。整枝前にキチンとワイヤーを張っていないと、ブドウの Baguette(長梢、棒状の枝)がまっすぐに整えられない。さらにこの作業が遅すぎると、後に発芽する芽が樹から落ちかねない。地味な作業だが、重要な仕事である。

 畑の修復作業も一段落すると、ワイヤーにブドウの枝を巻き付ける作業がはじまる。ブドウの樹は何もしないでほっておくと、枝が左右に伸びほうだいで、場所ばかりをとってしまい、樹同士の生長を邪魔してしまう。フランスのほとんどのワイン用のブドウの樹は畑に張り巡らされたワイヤーを用いる。Guyot Simple 剪定をされたブドウの Baguetteの部分はワイヤーに沿って横向きに括り付けられなければならない。これまで冬眠していた樹の枝を横に向ける作業が大変なことは理解に苦しくない。それを無理矢理、ねじまげる。枝が折れたら、そこについていた6-8つほどの芽が無駄になる(5-10房のブドウ)。一本折ったら、ワイン1本位失われる計算である。Village(村名格のワイン)ならまだしも、Grand Cru(特級格のワイン)だと一本の枝を折る事は、40euro位の損失である(すこしオーバーだが)。

           avant

apres



 Baguetteを折らないために気をつけなければならないことは、ズバリ、樹の高さである。剪定の際に選ばれたBaguetteが低い位置に、つまりワイヤーの張られた高さ、もしくは側面の距離が近いことが、重要なのであるしかし、そのためには日頃から訓練を積んだ人が剪定をしていることが大切で、数年来の剪定技術の結果が反映される。事実、我がDomaineにおいて4年間剪定済みのMeursault PoruzotとNSG Cerisiersの畑はブドウの樹が完璧な高さにあり、ほとんど枝を折らずに済んだのに対し、新しく入ったChambolleやÉchézeauxなどの畑はポキポキ、枝が折れて心休まることがなかった。良質の造り手というものは、基本的なことをしっかりと、そしてきっちりと行う事によってそのようになるのである。

 その他に、湿気も重要で、雨が降った時は枝が折れにくい。また、樹液が流れ出した春の時期、つまり冬眠が終わった頃合いは枝が柔らかくなる。雨が降ったタイミングに整枝作業をすることも一つのテクニックである。もしかしたら、フランスの南部でワイヤーを必要としないGoblet式の剪定が採られているのも、乾燥した地方においてワイヤーに枝を這わせるという考え方が生まれなかったかもしれない。

整枝が終わると、あとは芽が開くのを待つばかり。
Bourgogneは春になった、そう、もうすでに生命の息吹が起きだす季節は到来している。


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[ 2018/03/14 09:28 ] 栽培 | TB(0) | CM(0)

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