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オーストリア・ワイン紀行 後編 Niederösterreich西部とBurgenland北部

 オーストリアのワインと聞くと大抵が辛口白ワインの産地であるという印象がある。確かに、ドイツと隣り合わせで、両者の深い関係、標高の高い冷涼な気候を鑑みれば、白ワインに適する場所であるというのは得心がいく。しかし、遥かフランスはBourgogneに端を発する、シトー派修道僧たちは、この地においても偉大なる赤ワインを追求する精神を忘れてはいなかった。彼らの足跡が残る大地がこのオーストリアにも広がっていたのだ。

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オーストリア・ワイン紀行 後編 Niederösterreich西部とBurgenland北部


 Niederösterreich(ニーダーオステルライヒ)西部は東部とは異なった土壌が広がっている。東部のそれが、切り立った原生岩にロスの土が覆っているのとは異なり、西部はより石灰質の大地である。常々思うのだが、人間が線を引いた行政区画ばかりを頼りにワインの味わいを差異付けるのは限界がありすぎると思う。この場所は、首都ウィーン(Wien)があることもあり、文化的・行政的・商業的にもオーストリアで最も重要な中心地であった。そんな中心にあって、同時に、優れたワイン産地でもあるということには正直驚かされる。著しい個性を発揮する土壌がこの大都市の周りには広がっているのである。そんなウィーンのすぐ東部に目を向けてやれば、すぐさま新たなる銘醸地を見いだせる。かつてローマ帝国時代にパンノニアと呼ばれた、広大な盆地がそこにはあり、オーストリアでも温暖な気候の土地が広がっている。Carnuntum(カルヌントゥム)とBurgenland(ブルゲンランド)北部の丘陵が続く。豊富な石灰質の土壌、温暖さ、風通しの良さなどから、オーストリアきっての赤のワイン生産地である。Pinot系品種や、Zwigelt、Braufrankischといった品種が多く植えられている。Burgenlandとはドイツ語の「城塞が多い地方」という意味から来ているそうだが、そこに、Burgunder(ドイツ語で「Bourgogne」)という意味が混じっているように思えてならない。Burgenlandとハンガリーの間には Neusiedlersee(ノイジードル湖)という湖がある。この湖の周りは非常に湿度の高い土地であり、このことが葡萄に多くのボトリティスをもたらす一因となった。古くからこの地の貴腐ワインは殊に有名である。



Wien ウィーン 402ha


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 一国の首都の中に葡萄畑があるのは、珍しい。しかも、それが最上級の葡萄畑であるとなると、その特異性も際立っている。ウィーン市の周りの丘地には700ha以上の葡萄畑が広がっていて、北東部Floridsdorf、北西部Dobling、南西部Liesing共に、ウィーン市中心部から路面電車で一時間内に行く事のできる距離にある。これらのワインは、もともとウィーン市中のホイリゲで消費されるワインが主流であったのが、最近ではインターナショナルな成功から、輸出が増えて始めている。この地区でなんといっても忘れてはならないのが、Gemischter Satz(ゲミシュター・サッツ)という名で知られるワインである。特殊な栽培方法の一つで、同じ畑に数種類の葡萄を植えて、混醸したワインのことで、ウィーンでは伝統的に造られて来たワインの一つのカテゴリーである。AlsaceのMarcel Deissが造っているワインと同じと言えば、理解しやすいだろうか。このカテゴリーから生まれるワインは、つい先日DACとして認められ、2013年から DAC Wiener Gemischter Satzとして売られることとなるようだ。


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北東部Floridsdorf、北西部Dobling、南西部Liesingの三つの区画のウィーンの畑。ウィーンの葡萄畑は、もともとリンゴ畑だった都市の周りを開墾して畑にしたのが始まり。もともと白ワインの地。しかし、東から吹く温暖な風の恩恵からか、素晴らしい赤ワインも次々と生まれている。



Weingut Wieninger (ヴィーニンガー)-Wien(Floridsdorf)-


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 ウィーン中心部から路面電車に乗って北に向かうこと約30分、小さな村落Floridsdorfにたどり着く。周りにすぐさま畑が広がっているのかと思うと大違いで、丘らしい場所すら見えない。何か中世の家並みがまだ残った牧歌的な村である。隣合わせになった家屋が長く長く続いた一本道をずっと奥まで歩いていくと、この造り手の新しいカーヴにたどり着く。この日はちょうど新しいワイナリー完成パーティーだったらしく、当主のFritz Wieningerはかなり忙しそうだったが、丁寧に応対してくれた。国籍、立場違えど、お互いがワインラヴァーなのだということがわかって、なかなか話が止まらなかった。残念ながら、当日の夜のワインパーティーに参加するように誘っていただいたが、時間の折悪く断念。

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1haあたり8000本単位植えられた畑。収穫はもちろん手摘みのみで、畑による選果、さらにカーヴによる機械選果も行う。50ha+ネゴス15haながらビオディナミを実践。家族の他、従業員10人だという。世界29ヶ国に30%輸出。

 この造り手の葡萄畑は大別すると、二つの区画に分かれる。一つはウィーン北西部Nussbergの丘(Dobling)、そしてもう一つはDonau河を挟んだ対岸のウィーン北東部Bisambergの丘(Floridsdorf)である。化石を多く含んだ石灰質に富んだ土壌のNussbergからはRiesling、Gruner Veltliner系の品種が植えられ、砂質レス土に覆われた、粘土質石灰の土壌であるBisambergにはBourgogne系品種が植えられている。NussbergのRieslingとGruner Veltlinerはそれぞれ、フレッシュで上品なワイン、概ねスパイシーな性格で、ウィーン人がよく豚肉に合わせて飲むとの事であった。Nussbergの中でも優良区画のみで造っているGruner Veltliner Preussen'11はバランス良く、非常に強い個性をもったワインである。「非常に時間の必要なワイン。これこそが私が求めるGrunerの形だ。オーストリアでは一般受けする、スタンダードのGrunerはフレッシュで爽やかさが信条でソフトで飲みやすいが、そういったタイプのものは熟成しない」。その言葉を裏付けるように、試飲させてくれたこの畑のファーストヴィンテージGruner Veltliner Nussberg(Preussen)'99は雄大なストラクチャーと張りつめた長い余韻をもった素晴らしいワインであった。今回の旅で飲んだベストワインの一つである。Nussbergの葡萄のみで造られる Gemischter Satzもとても素晴らしいワインである( Gruner とRiesling系からの9品種のブレンド)。「ヴィンテージごとに別の品種らしさがでて、特徴的なワインとなる」というように、'11はGruner的、'08はRiesling的というように、各品種の良さがバランス良くまとまったワイン。彼の白ワインは2-3時間程度、スキンコンタクトされ、その後、3時間半程度のプレスが実施される。「私は長いエージングが好きだ。しかし、オーストリアやドイツの人間は早くワインを瓶詰めしたいという傾向があるんだ」との事である。

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一部の白ワインにはグラスコークも使用する。「とても良いコーク。シリコンで出来ている。しかし高い。レギュラーコークなみに高い」

 Bisambergはもともと赤ワインに適するエリアと呼ばれる。しかし、歴史的に白ワインのみであったウィーンのワイン造りからすると、これも近年になってからである。この造り手のワイナリーは、スコットランド起源のカトリック・ショッテン派元修道院のあった場所であるように、この地にはシトー派が来た足跡は少ないように思える。しかしそれでもこの造り手のワインの中で挙げられる特筆される赤ワインはPinot Noirである。シトー派がもたらしたわけでなく、「私の祖父がBourgogneワインの愛好家だったから、Pinot Noirを植えるようになったんだ」というように歴史は短いが、丁寧に造られた彼のPinot Noirはとても素晴らしい。キュヴェSelect'10の柔らかさ、パワフルなGrand Select'09の後に出された特別な年のみのTribute '07はエレガントの極地。20%全房発酵による丹念な造りが、オーストリアのPInot NoirをBourgogneに匹敵するレベルまで引き上げている。「ウィーン人はあまりPinot Noirスタイルのワインが好きではない。ボルドーのようなフルボディワインが好き。しかし近年の傾向として、オーストリア人はエレガントなスタイルのワインを求めるようになってきている」と言う彼自身がこの国の味覚を変えているのだとも言えるのではないか。ドイツのMunichにのみ販売しているというSt Laurent'09やCabernet,Merlot,ZweigeltブレンドのDanubis Grand Select'09も非常に高いレベル。

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他にも、ウィーン市中のワイナリーと協同で、シェーンブルン宮殿の中に葡萄畑を植え、造ったスペシャルキュヴェもある。



 高い志と、首都圏にワイナリーがあるという利点を存分に活かして、Fritz Wieningerのワイン造りに曇りはない。オーストリア一のワイナリーの一つである。


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Fritz Wieningerと。非常に気さくなヴィニョロン。「果実味を高めやすいから、選択酵母を使うのを好む造り手が多い。しかし私が求めるのは土壌のミネラルだから、自然酵母を使う」と、ワイン造りに対するこだわりは深い。Gemischter Satzに対する愛情はひとしおで、「Gemischterの収穫は一緒である。少し熟したり、熟してなかったりすることが、バランスよくまとまる。そう、オーケストラにおけるようなハーモニーが生まれるんだ」、と彼はハイドンとモーツァルトと生んだ国民の一人でもあるのである。




Carnuntum カルヌントゥム 411ha

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Carnuntumの畑は、その特徴的ななだらかな南斜面の丘陵。降雨量の低さの割にはWachauのように灌漑を多くしているわけでもない。


 首都ウィーンの近くに位置する910haばかりのこの小さなワイン産地、Carnuntumは、ニーダーオストライヒ州の中であっても、どちらかというと、パンノニア平原のテロワールの様相が色濃い。パンノニア平原は、かつてローマ帝国時代にはローマ皇帝の属領であった場所であった。現在のオーストリアの東から、クロアチア、ハンガリー、セルビア、スロヴェニア、スロヴァキア四方を山地に囲まれた、とても温暖な土地である。その中でも、紀元6年より、ローマの歴史書に言及されているCarnuntumは、異民族との間の文化交流のための重要な場所であった。土壌は肥沃で、礫と、ローム土、レス土に富んだ土地である。周りを山地に囲まれているために、降雨量はかなり低い。1900年ごろまでは白ワインがほとんどであったが、近年になって赤ワインが多く植えられるようになった。1987年より、Gruner VeltlinerにおいてはPrimus Carnuntum、1992年よりZweigeltとBlaufränkischにおいてRubin Carnuntum、そして2008年より各々のワイナリーにおけるベストワインに、Carnuntum Reserveという上位カテゴリーを自らのグループにおいて規定し、品質を管理することになった。そういった努力の甲斐あって、今ではオーストリア一の赤ワインの生産地の一つとも目されるようになってきている。

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Weingut Markowitsch (マルコヴィッチ) -Göttlesbrunn-


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このワイナリーの所有する畑の面積は35haで、さらに40haの畑から葡萄を買い付けるというので、なかなか大きな造り手であると言える。これだけの量の生産をするとなるとと訝しがって聞いたのだが、案の定、使用酵母は選択酵母が中心であり、上級ワインのみ、自然発酵を待つという。従業員は常時、セラーに5人、畑に10人。

 この造り手について興味を抱いたのは数年前。ある企画で、数種類の Pinot Noirをブラインドで飲み比べ、その優劣を競うというテイスティングに出ていたのだ。その時試飲されたワインは、BourgogneのDRC、ニュージーランドのFelton Road、オレゴンのDomaine Sereneといったワインで、テイスターは各国の著名人ばかり。こういう試飲会はよくあるのだが、なぜ、記憶に残ったかというと、この Markowitschのワインが蒼々たる各国のPinotを抑え、一位に輝いたからである。オーストリアという産地で、これほどの戦績を納めるというのは、前代未聞で、特筆すべきであった。

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 Gerhard Markowitsch(ゲアハルト・マルコヴィッチ)は、ここCarnuntum最良の造り手と呼ばれているが、まだ若い。色々な醸造法を模索し続けている進取の気鋭に富んだ人物である。試飲室に通されるとまず目を奪われるのが、棚の上に飾られた高級ワインの空き瓶の数々。Bordeauxの瓶もそうだが、RousseauのChambertinがズラリと並んでいるのには、彼の好みがなんとも理解しやすいと感じた。新しい時代の造り手の目指す方向性は、繊細なBourgogneスタイルのワインなのだと思えて仕方ない。

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案内されたセラー中ではずっと、音楽がなりっぱなしだったのが印象的であった。ほとんどがフレンチオークで、上級ワインのみ大樽で熟成。手摘みのみ収穫で、選果はカーヴにおいて、マシーンで行なう。

 ワインは深淵なPinot Noirを始め、バランスのとれたRubin Carnuntum、スパイシーで強いRosenberg、そして例のPinot Noir Reserveは時間とともに素晴らしい真価を見せそうなキュヴェであった。St. Laurent Rotenbergの嫌みのない綺麗な味わいも素晴らしく、Pinot Noir的な美しいプロポーションはとても良い。Pinot Noirは無理してその味わいを抽出しようと造っているが、St. Laurentは生まれたそのままの美しさを保持しようとしているという印象である。

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実験的に使っている、ZweigeltやCS用中樽発酵槽。実験というと、完梗発酵なども三年前に試したが、よくなかったの断念したという。試験に試験を重ねる姿勢が常にある。




Neusiedlersee ノイジードラゼー 3727ha


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気候はパンノニア気候。夏は非常に乾燥して、暑い。冬は寒く、春の降雨量は高い。全体には非常に乾燥していて、年間降雨量は500mmである。Golsはオーストリアでは最も暑い場所の一つである。年間平均気温は10.6度。すくなくとも夏期には61日間、25度を越える。Neusiedl湖(36kmの長さ、20kmの幅)のミクロクリマが重要で、湿度を保つ。夏は湖の熱で28度まで上昇する。春の霜の危険性も少なくなる。この様な状況は遅く熟する品種にとって良い。ノイジードル湖から吹く暖かい風とParndorfer Platteからの冷たい風が入り交じる。これが、夏の涼しさと、冬の暖かさを与える。

 1985年からのオーストリアにおけるワイン醸造は、革命的であった。醸造所の改良、国際品種の導入など、各々のワインの品質向上のための努力が続けられるようになった。グローバルなワインのスタイル構築は、マーケットの上ではとても成功していて、オーストリアのワイン品質の底上げのための重要なステップとなった。しかしながら、新しいモダンな技術の導入は、ワインにある種の均質化された味わい、つまり地方特有のワインの味わいを損なう事までも止める事はできなかった。他国の産地で続いた運動と連動していたためである。

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Parndorfer Platteは、ドナウ河から流れ落ちる、石ころの多い高台。南部が葡萄栽培に適する。氷河期時代の石灰の細かい堆積した土壌が混じる。シルトの石ころ混じりの土壌である。つまり表土は深く、水分を多く含んでいる。Parndorfer platteの南西がWagramで、第三紀の砂質ローム土壌に石ころが混じる。細かな砂とチョークの堆積した土壌に深く傾いた、シルトと石ころの多い層が重なる。HeidebodenはWagramの下の軽い傾斜。チョークの多い黒い土の土壌に、少ないチョーク質の石ころが混じる。白ワインが多い。


 このような現状の中、本当に素晴らしいワインとは何か、自分たちのテロワールの味わいとは何かという活きたイメージとヴィジョンを模索する動きが生まれだした。そういう強いヴィジョンの高まりをまとめるために、 Neusiedl湖北のGols(ゴルス)村で志を共にする意志高いワインメーカーが集まってできたグループ、Pannobile(パノービレ)が生まれることとなった。

Paul Achs,Matthias Beck,Hans Gsellmann,Gernot Heinrich,Matthias Leitner,Hans Nittnaus,Helmuth Renner,Gerhard,そして1998年から Gerhard Pittnauer,2004年からClaus Preisingerの9つのGols村の9つのワインメーカーによって活動が続けられている。

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キュヴェPannobileのワイン。Pannobileの名は、提唱者のHans Nittnausによって選ばれた(すでにその名のキュヴェが存在した)。ローマ時代に呼ばれていたこの地方の名称、"Pannonia"に、"Nobile"という高貴なワインを意味する名を加えたものである。


 1994年に結成されたこのグループの目的は、モダンでも、国際的でもなく、この土地特有の土壌の味わい、個性に根ざした、固有品種から造られる、品質の高いワイン造りである。そのスローガンは、「PannobileはNeusiedl am SeeからHalbturn間の最高の土壌の固有品種、土壌、そして特別なミクロ・クリマのイメージの鏡ともいえるものである。ワインは小規模の辛口でなくてはならない。使用を許される品種は単一品種か、もっともよく使用されるキュヴェからでなくてはならない」であり、バイオロジーを実践することが目的となっている。葡萄は完熟し、ボトリティスに冒されず、手摘みであることが条件。カーヴでも丁寧な選果をして、品質管理を徹底する。赤は自然酵母のみ使用。自身で自ら、品質をセルフコントロール(定期的にテイスティングを行ない、意見を交換し、それぞれの品質向上に努める)したキュヴェ、Pannobileのファーストヴィンテージは1992年(白ワインは1993年)からリリースされるようになった。非常に素晴らしい高品質ワイン造りへの信念を感じる。オーストリア・ワインの改革を後押しし、未来を担った、素晴らしいグループである。



Weingut Pittnauer (ピットナウアー) -Gols-

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ボトルはワインごとに違うラベルを使用し、この地方の芸術家をラベルアートに起用している。

 St. Laurent(ザンクト・ローラン)という品種がある。
 ピュアな赤果実のアロマ、常に薫るフローラルな個性。味わいはとても繊細で、決してタニックではない。非常にPinot Noirに似ているのだが、起源ははっきりしない。恐らくPinot Noirの系図に位置し、Alsace、ドイツから来たのだと推測されている。現在、オーストリア全体では48500ha植えられ、そのうちBurgenlandには14560haある。「スパイシーさと胡椒のニュアンスがSyrahに、そしてPinot Noirのような、きめ細かさ、エレガントさを併せ持つ」とは、前回に紹介したSchloss Gobelsburg(シュロス・ゴベルスブルグ)のMichael Moosbrugger(ミカエル・ムースブルッガー)。

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彼はプロテスタントである(Gols村は皆、プロテスタントだというが)。Pannobileには1998年から入会。「この地区は赤ワインに適する。甘口ワインはもう少し南部で適する」との事。

  Gols(ゴルス)村のGerhard Pittnauer(ゲアハルト・ピットナウアー)は、この品種にただならぬ熱意を注いでいる。この地に適する品種はまず何よりもZweigeltや, Blaufränkischであると考える他の生産者を尻目に、彼はSt. Laurentから数種類のキュヴェを作っている。スタンダードキュヴェのDolflagenの分かりやすい味わい、酸味は彼の好きな「Bourgogne」の味わいを彷彿とさせるものである。Gols西部の中腹の丘 Rosenbergから生まれるそれは繊細さの極地で、味わいは非常にシルキーでエレガントである。非常に素晴らしい。2001年新装のワイナリー周りの畑、Altenbergのそれはとてもスパイシーで構成感に富んでいる。そして樹齢45年のAlte Rebenに至ると、複雑味はより一層増し、余韻の長さは圧巻、偉大な赤ワインである。何も、この地でPinot Noirを植える必要はないのではないかという、ちょっとした直感に答えてくれるものであった。それもそのはず、非常に暑く乾燥した夏を過ごすこの地にはPinot Noirには不向きである。勿論、彼は16haあるその自社畑には、他の品種も植えていて、BlanfränkischやChardonnayなどのキュヴェもある。いずれも、それらの品種の個性を活かした素晴らしいワインである。



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          フレンチオークの1500l 樽のみ使用で、新樽は使用しない。

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Neusiedlersee-Hügelland ノイジードラゼー・ヒューゲルランド 1531ha


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非常に美しい湖。この湖がワインの味わいに与える影響は計り知れない。


 Neusiedle(ノイジードル)湖の西側に広がる歴史的な葡萄産地。珊瑚の化石を含んだ、石灰質に富んだ土壌。Neusiedle湖北部とは個性が著しく異なっていて、そのテロワールの差が使用される葡萄品種によっても違うのは面白い。
 Neusiedle湖は、表面積は315平方kmあるものの、水深は1.8mと浅い。過去に何度も干上がったことがある、非常に不安定な湖である。しかし、湖というよりは湿地といった方が適切なこの場所では、ボトリティス・シネレア菌が繁殖しやすい。だからこそ、10年に7-8回は貴腐がつくという正に甘口ワインを造るために恵まれた産地なのである。ルスト村はNeusiedle湖の西側にある小さな村で、中世から甘口ワインの産地として知られて来た。Ruster Ausbruckで知られる貴腐ワインは、オーストリア国内外でも知られているほどである。甘口に使われる葡萄品種はWelchriesling,Weissbrugunder,Grüner Veltliner,Traminer,Gelber Muskateller,Chardonnay,Sauvignon Blancなどであり、ヴィンテージによって、貴腐の付く割合は異なり多様な個性を持っている。
 最近では良質の赤ワインの生産、オーストリア屈指の赤ワイン産地としても名を馳せてきている。近隣のハンガリーのSopranが赤ワインの産地であることにも関連しているのだろう。それも、1921年以前まではここはハンガリーの領土であったことを考えれば納得しやすいのではある。さらに西側のLeitha(ライタ)山脈の麓の畑は、DAC Leithaberg ライタベルグとして知られるようになった。主要な赤はBlanflänkischで、この地の土壌にとても合い、多品種を少しブレンドしてバランスをとることで、素晴らしい個性をもったワインを生む。北の産地に多い、St-Laurentなどは逆にこの地には向かないそうである。収穫時の熟成が早すぎるのと、ボトリティスに耐性が少ないのがその理由だという。

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この地の石灰岩。「この地方では灌漑しない。土地は非常に肥沃なので、必要ない」周りの多くの生産者が畑をあきらめて、葡萄畑と葡萄畑の間に何もない、という光景が目立った。若い生産者は、畑離れをしているのだろうか


Weingut Ernst Tribaumer (エルンスト・トリーバウマー) -Rust-


 「1985年におきたジエチレングリコール事件は、私たちの生活を救う事件であった」とHerbert Triebaumer(ヘアベルト・トリーバウマー)は述べた。

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 腫れ物に触るような思いをしながら、私は事件について尋ねたのだが、返答は思っていたのとは違って、かなりポジティブであった。オーストリアのワインについての話題でどうしても避けられないのが、1985年に起こったこの事件である。安価な甘口ワインの味わいに、深みと厚みを持たせて、あたかも高級甘口ワインのような味わいを捏造することが出来るジエチレングリコールという薬品が、オーストリアの多くの生産者が混入していたというスキャンダルである。それが発覚したのも、このワイナリーのある Rust村からであった。ジエチレングリコールは人体において、毒性をもった薬品であり、過去に多くの中毒事件があったことで知られる。この事件は、イタリア・ドイツにも飛び火したばかりか、日本ワインとして売られていたものからもこの薬品が検出するにおよび(これらのワインをパルク買いして、日本ワインとして売っていたため)、社会的な問題になった。オーストリアワイン市場にとって壊滅的な打撃を与える事件であった。しかしながら、一連の事件の後、オーストリアのワイン産業は変わった。厳しいワイン法が徹底されることになり、若者の生産者が、台頭する余地が生まれた。『質より量』を求めていた協同組合は一掃され、それまで細々と畑を耕すのみだった農家は、自分たちの力でワインを瓶詰めすることになった。Herbertは続いて述べる、「1985年以後と以降では、私たちの歩みは全く異なる。以前、我々はどんなに努力してワインを造っても、評価されることがなかった。巨大な企業が沢山シェアを奪っていたのがその理由。しかし事件において、悪事を働いていた大企業が一掃されたことで、我々のような零細企業にも評価が下されるようになったのだ。見てごらん、この地方では中小企業しか残っていないのだから。我々は20haの畑を所有しているけれども、これでも中規模だ。最大のワイナリーは50ha畑を所有しているけれども、平均すれば、大体10-15haの小ワイナリーが多いんだ」。

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          色々な果樹を植えている。


 このワイナリーは1691年からRust村に住んで葡萄造りをしている家族経営の造り手である。父Ernestは引退し、弟二人、妹とともに、Herbert Tribaumerがこのワイナリーをもり立てている。約30年前の事件などもはや、どこ吹く風といった感じの Herbert Tribaumerは一風変わった独自な思想をもった青年である。「ポリカルチャーによる栽培がベストだ。モノカルチャーは畑を殺す」と言うように自社畑は、葡萄だけでなく、果樹園を植え、家畜を飼っている。かといって、ビオディナミやビオロジーではない。やっている事は同じでも、ビオロジー認定団体のルールに縛られるのが嫌なのだ。教条的な事を好まず、自ら実践して、経験した知識のみに重きを置くタイプだ。大体、痛んだ畑を10年間休耕させたり、畑の生体バランスを保つために木を植えたり、畑に羊を飼うという発想は、中々、教科書からは生まれてこない考え方だ。1haあたり10頭の羊がいるそうだが、羊に葡萄の葉を食べられないように剪定法を変えた。それでも、より色濃くて美味しそうな葡萄の葉を食べようとするので、畑に電線をはったというから、その意気込みが理解される。3年前から実験的に羊を飼いだしたわけだが、その成果は年々上がって来ているという。

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いつも餌をくれるHerbert Triebaumerによく懐く羊たち。実は、訪問した日にまた一頭、新しい仔羊が生まれたばかりだった。

 発酵に使用するのは自然酵母のみ、ときっぱり言い放った。ここまで、言いきれる造り手はオーストリアでは初めてで、ようやく、真面目に自然な仕事に取り組んでいる造り手に会えたと思った。ただし、Eisweinのみは選択酵母の使用をやむを得ないという。それは高い糖度に酵母が耐えられないためではなく、Eiswein収穫の為に霜付きの葡萄を摘もうとしても、酵母が生き残ることがないためである。SO2の使用も瓶詰め前のみで、プレス時には加えない。以上のことから理解されることは、彼は潔癖な自然派志向のワイン生産者である。生真面目な性格は、隣国のハンガリーの影響が強いのだろうか、それともプロテスタント気質なのだろうか、他人とは一線を画した独自の哲学をもってワイン造りを行なっているのである。

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 白ワイン、赤ワイン、甘口ワインをそれぞれ生産している。白ワインはどこかドイツ市場を意識しているのだろうか、ドイツ系品種はフレッシュに過ぎ、Chardonnayは樽香が付きすぎてクドイ。最初のワインからすでにバーボンのアロマが強いのに、次々ともっと濃厚なワインはあるぞ、とばかりにHerbertが自慢のChardonnayのトップキュヴェをだした時には辟易した。しかしながら、赤ワインになると話は変わる。スパイシーかつジューシーで、獣っぽい個性のBlaufränkischeに、Cabernet&Merlotは腰がしっかりとしていて素晴らしい。しかし赤ワイン最後のBlaufränkishe Mariental '10が出るに及ぶと、驚嘆させられる。グラス中にこぼれるスミレのような、フローラルなアロマ。テロワールと品種が見事に一致していないと出てこない、素晴らしい香りである。なんと上品で、凛とした響きと、余韻の美しさを持ったワインであるかと。流石に、多くの生産者が絶賛される、素晴らしいワインであった。二つの甘口ワイン、Eiswein('10は12月に収穫、'11は翌年の2月に収穫!)とAusbruchも素晴らしく美味であった。「たとえ、貴腐がつかなくても、そのかわりにEisweinを造るんだよ」というように、貴腐がない年は葡萄が氷結するのを待つ。しかし、「Eisweinの収穫の為には、我々は常に朝の気候が下がるのを待たねばならない。だから収穫人はいつも知り合いに頼むことになる。その収穫の日が決まるのが前日の昼だったりすることはザラだよ。そして収穫は朝早くから行なわれる」といったような苦労の甲斐あって素晴らしいワインは生まれるのだろう。


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Pinot Noirはマッサル選抜したものを使用する。「すべての木は異なっている。だから木ごとに剪定方法が違うのは当然だ」という風に木ごとにCordonであったり、独自の剪定方法を行っている。特に、羊が芽を食べないように、と高めの剪定しているのだが、そういう理由で高くしたと聞くのは初めてだ。





まとめ

 オーストリアのワインは何も白ワインだけではなかった。深い歴史があるというわけではないにせよ、素晴らしい赤ワインを生産する地方である。Zweigeltの濃密さ、Blaufrankischのアロマ、Pinot Noirのミネラル、St-Laurentのデリケートさ。いずれも、高い品性をもったワインであった。しかも何よりも、ワインの味わいがテロワールに深く根ざしていた事が理解できたことがよかった。Gemischter Satzといった地方性のワインがちゃんとした法規制のもと保護されるようになったということも素晴らしい事である。あまり言及しなかったが、もちろん、この地で生まれる甘口ワインも素晴らしいものである。隣国のドイツに比べると遥かにコストパフォーマンスに優れた、極上のスィートワインが生産されている。これからも非常に期待がもてる生産地である。

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資料
http://www.austrianwine.jp
http://carnuntum-experience.com/fileadmin/user_upload/2009/pressemappe_carnuntum.pdf
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[ 2013/11/19 09:49 ] 産地 | TB(0) | CM(0)

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