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Visit Report; 023 Weingut Bernhard Huber

「SpätburgunderがPinot Noirでなく、この地でMalteringerと呼ばれていたという事実」

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Weingut Bernhard Huber[ヴァイングート・ベルンハルト・フーバー(本当はカタカナ表記は、どうやっても発音上の不一致が生じるので好まないのだが、一応日本語に近い発音を考えてみると、こうなる)] は、ドイツのBaden[バーデン]地方のMalterdingen[マルターティンゲン]村の造り手である


Huber氏は故郷のMalterdingenでは古くにはCîteaux派修道僧によってフランスからもたらされたPinot Noir品種が、「Malterdinger」(Spätburgunderではなく)と呼ばれていたことを知り、この地で自らワインを造ることを決意する
当時、赤ワインの品質の余地には否定的だったドイツにおいて、Spätburgunderの可能性に賭けた一人の男の物語はここから始まる
そして今では、ドイツ屈指の赤ワインの造り手として、世界的に名声を高めつつある造り手とまでなった

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近代的な醸造所

訪問当日、当主のBernhard氏はなんと、日本に出張中で、息子JulianもBourgogneに研修中とのことであった
二人とも筆者と縁のある場所に行っていて、会えなかったのが非常に残念である
日本はとても大切な顧客だそうで、年に1-2回は出張しているという大の親日家である
現在、筆者と同じDomaineで働いている研修生がこの造り手で昔働いていたので、彼女が案内してくれた
とてもアットホームな雰囲気であった

さて、Weingut Huberといえば、Baden地方のBreisgau地区の中のMalterdingen村であり、この村を覆う畑がBienenbergである
全部で130haある巨大なBienenbergというGroßes Lage(集合畑)の中で彼が所有するのは15haである
さらに彼の所有する15ha中10.45haはGrosses Gewachs(特級畑)扱いである
なだらかな南斜面の丘であるが、場所によっては斜面の角度は15度から60度に及ぶ

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醸造所のすぐ裏手にあるBienenbergの畑

畑はこの地方特有のテラス方式で、段々畑が村の周りを囲む
剪定法はGuyot Simpleだが、少し樹は高め
植樹密植は7000本/haだと推測される

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厳しい剪定方法を行い、畑によってはTraube Halbierenという方法で、夏の間に一つ一つ葡萄の半分を切り落とす方法を使う時もある
平均収量は赤ワインで30hl/ha、白ワイン40hl/haで、Bourgogneの特級のそれよりもよりもはるかに少ない数値である

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Bourgogneでは見かけないLöss[黄土]がこの地には多い

Bienenbergの地質は、Muschelkalk[貝殻石灰]と呼ばれる特殊な石灰を含む、Trias紀の地層である
どうも巷では、「Bourgogneと同じ地質」という表現がされるが、全く同じではない
石灰質とマールの存在性が、同じ石と土を連想させるが、BourogneのそれはTrias紀より後のJurassique紀の石灰である
石灰という生物由来の性質上、同じ生物の石灰とは言い切れないと思う(ましてや時代が違う)
さらに、Bourgogneの丘がほぼすべて東斜面なのに対し、Breisgauは南斜面である(西向きや東向きも加わる)
しかも、Badenの畑はテラス状になっており、斜面の緩急は全く同じではない
さらに筆者が、Badenを見た限りでは、かなり多くのLöss[黄土]があり、これはBourgogneでは全く見たことがない
そして気候も遥かに異なる
これだけ違うデータを挙げれば、BadenのワインがBourgogneと同じになるはずがないという結果が予測されうる
Loess混じりのMarno-Calcaireの土壌で南斜面というならば、白ワインに適するAlsaceの方が同じ地質を余程多く発見できそうだ


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左がBombachのMuschelkalkで、右がHecklingenのMuschelkalk

さらに他の村の畑も数種類所有している
Bombacher Sommerhalde(2.15ha所有)は赤いMuschelkalkの地質で、表土はLehm(黄土が変化した土壌)、石灰、泥灰岩(マール)。
Hecklinger Schlossberg(6ha所有)は白いMuschelkalkの地質で、表土は砂、シルト、石灰に覆われている



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衛生管理を徹底されたカーヴ。フランスよりも厳格な基準。

Domaine内はとてもモダンな設備である
巨大なステンレスタンクと発酵用大樽に、すべてクレーンで持ち上げて葡萄をタンクに入れられるように設備されたカーヴ
白ワイン醸造用の小樽と赤ワイン醸造用の小樽が安置された部屋が別々に造られている
樽会社はBourgogneのメーカーのみで、Rousseau、Tarransaud、Remond、Damy
樽材のオークはフランスのAllier産の他、ドイツのBaden産のものも使用

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樽は機械的にきちんと整理されている

しかも、普通は樽会社が行うオーク材の野外乾燥作業も、Domaine内で乾燥させる
週ごとにオーク材の位置を変えなくてはいけない骨の折れる作業である
Séchage(乾燥)期間は3年とのこと
樽のサイズを変更して700lに変えることを試験的に行っている

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野外乾燥中の樽材の板

Barbara夫人が大のChampagne好きとあって、発泡酒造りも本格的だ
Méthode Champenoise(フランスのChampagne地方と同じ方式のスパークリング・ワイン)
Remuage(動瓶作業)はすべて手で行う
そして、普通のCrémantよりもはるかに長い瓶内熟成を経て、9ヶ月~24ヶ月、Dégorger(リキュール添加)される
ユニークなのが、すべての瓶のエティケットは手書きである
その労力は、計り知れないものがある


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専用のクレーンで、葡萄を押し上げて槽に入れる。すべての槽は、クレーンで運べるように安置されている。


ー 試飲

近代的なテイスティングルームにて試飲を行った
土曜日の朝というのに、試飲にくる愛好家は絶えなかった。
すべて瓶からの試飲で、値段は現時点での税込み価格である
【表記順は、村名、畑名、品種、ヴィンテージ、アルコール度、値段、とした】

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Malterdingenの村。村を囲むようにして畑は連なる。

Malterdinger Bienenberg Auxerrois Kabinett '09 11.5% (11.2e): ステンレス熟成。花の香り。フレッシュ感、クリスピーなミネラル。そして口の中で弾ける果実の強さはとても驚かされるものがある。きめ細かい味わい。「広がりのある果実味のAuxerrois」

Malterdinger Bienenberg Muskateller Kabinett '09 11.5% (11.2e); ステンレス熟成。Muscatというフランスの品種は、とても特徴的な品種である。葡萄そのままの果実の香りが、グラスから踊りだし、飲み手の気をそそる。ワイン初心者の頃には、この甘ったるい、覚えやすい香りがとても心地よく感じるのだが、愛好家にとってはもうウンザリになりやすい品種である。ところが、このMuskatellerには、そのしつこい嫌みがない。果実味は高いが、繊細な味わいが口の中を引き締める。石灰質のMuscatはかくも上品なものになるのかとハッとさせられる味わいである。「優しいMuscat」

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Weißer Burgunder '09(12e):発酵はステンレスタンク。そして80%ステンレスと20%樽熟成。MLF由来の強い複雑味。とても、べったりと重たい、熟成型。「樽香Pinot Blanc」

Grauer Burgunder '09(12e): ステンレス+樽熟成。実にフレッシュな酸と軽やかな厚み。口の中に伸びとハリがあり、しなやかさがある。AlsaceのPinot Grisにありがちな、脂っこさはなく、実に繊細。「Bourgogne白的Pinot Gris」

Malterdinger Bienenberg Grauer Burgunder Reserve '08(24e): 13.5%。大樽発酵して、10ヶ月寝かせた上、小樽に移す。とても複雑味があり、ミネラルも強い。樽香が今は気になるが、熟成とともにこれがバランスを生んでいくだろう。

Chardonnay '08(24e):「いい加減なフランス人の苗業者によってWeißer Burgunderだと思われていた品種」。非常にリッチで、高いアルコール感(13.5%)。12ヶ月の新樽熟成(途中で小樽に移す)。California的白ワイン。

Hecklinger Schlossberg Chardonnay Reserve '08(42e):樽香は相変わらず強いが、それに張り合うレモン様の果実がある。とてもリッチだがフレッシュ。強靭な凝縮感は60°に及ぶ、斜面の角度と、20hl/haという超低収量(Leroyクラス)によって得られる

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ドイツ最高峰の赤ワイン...

Malterdinger Spätburgunder '08(14.9e): 12ヶ月熟成(2-3年樽)。SpätburgunderはDijonクローンを使用しているようだ。少しスパイシーで、野苺を思わせる香り。

Malterdinger Bienenberg Spätburgunder Reserve '07(37e): 18ヶ月小樽熟成。最初に香ってくるのはCôte de Nuits的な甘美な香り。赤果実。高貴な花。芳醇で、力強い。口の中に残るスパイシー感が、Bourgogneへのイメージの旅路を中断させ、Badenの印象となって消える。味わいの構造がCôte de Nuitsのそれと異なる。Morey-Saint-Denisもしくは、南の方の畑のGevrey-Chambertin的とも言える。

Bombacher Sommerhalde Spätburgunder Reserve '07(37e): 同じくCôte de Nuits的香り。繊細さが強く、果実は酸味を帯びる。つまり柑橘様の香りが赤果実に混じる。しかし、味わいはやっぱり微妙にBourgogneではない。雑味があり、口の中で弾けるスパイシーさが残る。涼しげな印象があるのは、高地のテロワールの影響。「丘の上の森が風から守ってくれる」Chambolleというより、Vosne-Romanée的なニュアンス。

Hecklinger Sclossberg Spätburgunder Reserve '08(48e): Nuits-Saint-Georges的。香りはBoourgogneに近いが、味わいはテロワールの差を示している。とても綺麗なバランスがあり、品位がある。強くよく熟したような果実の香りが、良いヴィンテージの特徴を示す。しかし、Badenのオリジナリティーを感じつつ、樽香は少なく、とても深みのある味わい。長く熟成することは間違いない。

Hecklinger Sclossberg Spätburgunder Reserve '07(48e): '08とは打って変わって、とてもアエリアン(羽毛のような軽さ)で、ミネラル。繊細で細いけど、しっかりと味わいは凝縮している。構成分はしっかりしているのだ。'08よりも早飲みのヴィンテージの模様。

Wildenstein Spätburgunder Reserve '07(66e):上の畑のワインと同じく、特殊な葡萄の予備剪定(ハーフカット)を行っている。畑はBienenberg内の最良畑のみから造られる。涼しげなワインであり、かつ濃厚。濃い液体だがバランスが崩れていて、今は味わいの各要素がまとまっていない。今は待たなければいけない段階。

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手書きのボトル

Muskateller extra brut '08(14.5e): 9ヶ月瓶熟。デリケートな酸。Moscat d'Astiの甘ったるさがない。糖分を抑えに抑えた、繊細なMuscatである。Muscatという、動的な葡萄品種は石灰質のような静的な地質によく合うと思う

Pinot rosé brut '05(16.5); Spätburgunder使用。二年間の瓶熟。ヴァニラ様のイーストの香りとアイスクリームのような穏やかな香りが、仄かについている。味わいはとても繊細で、一般のChampagneにはない、軽さと線の細さを持つ。決して強くないドイツの泡。素晴らしい味わい。

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Bienenbergenの畑

ワインのスタイルはクリーンさと、味わいの中でさらに深まる果実の強さである
たとえ、ミネラルとリンゴ様の果実が強く香り、力強いプロポーションを持つ、Grauer Brugunder(Pinot Gris)もここでは線の細い、軽い味わいになる

Spätburgunderは、Bourgogneのそれも、Côte de Nuitsのそれを思わせる、赤い果実と、花の香りがでている
そこにドイツ的な樽香とスパイス感がからまる
Bourgogneに慣れた筆者の舌には、SpätburgunderとChardonnayは、樽香が少し強い気がした
余剰に感じる厚みがバランスを崩している...?
しかしながら、Bourgogneとの類似性ばかりを探すテイスティングは全く意味がないのだろう
新しい産地のワインを飲む時は、もとから知っている情報を手がかりにして理解するしかない
どうしてもBourgogneと結びつけて飲んでしまうのだが、それではかえって、新しい産地の美点に目をつぶってしまうことになりかねない
ここまで、Côte de Nuitsに近づいたPinot Noirは今まで飲んだことはなかったが、やはり微妙に違う
同じ石灰質とは言え、違う年代の地層、気候、文化
違うことにこそ価値があり、BadenのMalteringerという個性が活きるのであろう

Badenの、とうかHuberの、Spätburgunderを再構築してみると...、
赤い果実と花のニュアンスは、Côte de BeauneよりもCôe de Nuitsのそれを想起させる
味わいの中に、スパイスの躍動感を感じ、タンニンの収斂性を感じる
酸はけっして高くなく、かといってリッチすぎない

SancerreのAlphonse Mellotの造る素晴らしいPinot Noirにも通じる、卓越した素晴らしい赤ワインである
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[ 2011/01/25 03:43 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(0)

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