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Pourriture Acide(酢酸腐敗)

ワインの味わいのメカニズムをより理解するためには、葡萄畑を知らなければならない
その中で、醸造家の栽培哲学、栽培にあたっての心得を知る事はとても重要なことであるように思える
栽培に関する知識は、いまいち、一般のワイン書には載っていないテーマであるが、このブログでは敢えてそのようなマイナーなテーマを掘り下げてみたいと思っている

今回は、アルザス地方やドイツで多い腐敗である酢酸腐敗について調査してみた
内容の多くは Alain Reynier著の Manuel de viticulture 10e édition(Lavoisier社)に準拠している



 Pourriture Acide

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 Pourriture Acide(酢酸腐敗)は、1899年に、Joseph Capus(病害についての多くの書物を残し、AOC法とINAO成立に関わった人物)によってSauterneにおいて確認された病気である。多くの国(アメリカ、チリ、イタリア、スペイン、ウルグアイ)で見られ、フランス内でも多くの地方(Alsace,Ardèche,Vaucluse,Gard,Var,Bouches du Rhône)に及んでいる。収穫の際に湿気の多い畑で発症しやすい。特に、1982年、1987年、1990年、1991年、1992年、1997年、1999年に多く発症。



 夏の期間に、白ブドウの色が赤いレンガ色を、赤ブドウが紫がかった茶色を帯びる事がある(最も頻繁に見られるのが、列の端の樹もしくは、隅の列)。最初、ブドウの実の皮がすべすべした状態になり、次ぎに果肉が急速に果汁の色を残しながら溶液化する。
 この現象は、1)ショウジョウバエ(Drosophiles、果実の虫、もしくはヴィネガーの虫)の成虫が実のまわりに大量に飛び交い、2)ショウジョウバエの幼虫もつぎつぎと発生し、3)ツンと刺すような酢の匂いが辺りに漂うようになる。
 傷つけられた実の中身は次第に空になっていく。病気の悪化の後、渇いた天候になると、果梗に残るのは膨れ上がって硬く、ミイラ化した皮だけが残る。被害は夏の間に現れ、色付きから収穫の間の雨がちな期間に見られる。この病気の進行を見つけ出すためには、ブドウの実の内側をよく観察しなければならない。手につかむと、すぐさま実は弾け散ってしまうようになる。

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   蜂によって傷つけられた実は、腐敗の原因となりやすい

被害

 1. ブドウへの直接の被害;大なり小なり、収量の減少。衛生状態が悪化し、実の形が変成し、良くないヴィネガーの香りが立つ。
 2. マストとワインへの間接的被害;マスト内の揮発酸の値が上昇(通常の2-4倍)。発酵は清潔なマスト以外のいつものと異なる酵母によるものになる。ボトリティスや、二次的細菌の影響も累積されて、グルコン酸の値が増える。収穫の際の酸の腐敗の状態によってワインは、MLF後に揮発酸の値が2-3倍にまで上昇し、消費用には適さず、結果として酢になることがある。Pyrénées山脈東部のMuscatは、この病気によって潜在アロマがなくなることが発見されている。選果と醸造テクニック(8-10g/hlの硫黄添加、アルコール発酵が始まるまでに選択酵母を使用、発酵後にMLF用のヴァクテリア添加)を行なう事によって、この大半の部分を取り除ける。

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 傷口から腐敗しやすくなる。そのことはつまり、雹害を受けた葡萄畑にもこの腐敗のリスクがあるということを意味する。


感染

 この伝染性の病気には沢山の寄生者が存在する。ブドウの実の中の寄生者と密接に関連している。まず間違いなく挙げられることは、酢酸性の酵母とヴァクテリアが、果肉の細胞の有機物を変化させ、かつさらに、ショウジョウバエが卵を生み、幼虫の生育させることである。さらに、ネマトード(線虫)の影響も挙げられるだろう。

 一般的に酢酸性の酵母とヴァクテリアは、収穫の際に清潔なブドウの中に見つけられる。この微生物は、冬の間は土中に過ごし、ブドウが青い内は姿を顕さない。塵や昆虫に運ばれてブドウの白粉の中までやってくるが、Véraison(色付き)が終わってからのみである。昆虫の中でも、特にショウジョウバエは、脚でこれらの微生物を運び、排泄物と一緒にブドウの上に残して行く。酵母の90%近くはこれらの菌、特にKloeckera apiculata種による。菌類、乳酸ヴァクテリア、酢酸ヴァクテリアはこの自然の細菌叢の中に含まれる。酢酸に冒されたブドウは、Kloeclera apiculataの他にも、普段はあまり多くない酵母(Metschnikowia pulcherrima,Candida diversa,Candida stellata,Pichia membranaefaciens)も含まれ、酢酸エチルとアセトアルデヒドをつくり出す可能性もある。酵母の他にも、酢酸ヴァクテリア(Gluconobacter sp.)や乳酸ヴァクテリアから原因を見いだせる時もある。これらの細菌類はブドウの糖分のある場所に入り込むとすぐに活発に活動し始める。これらはある種の発酵を引き起こしながら、ブドウを変質させ、酢酸を生み出す。

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ショウジョウバエ。驚くべき繁殖スピードで増える。ちなみに、グラスにこの蝿が入ると、ワインの味わいが極端に落ちるので要注意!

 ショウジョウバエ(Drosophiles)は、ブドウ滓、澱の堆肥、傷ついた果実に大量に発生してたかる蝿である。黄褐色で、腹は黒く、眼は赤い。膜翅を持つ。雌は2.5-3mmの大きさで、雄は雌よりも少し小さい。(ブドウや果実の)発酵を換気し、そこから養分を採り、卵を産みつける。果実の周りを動き回り、綺麗なブドウの上に酵母や細菌を排泄物と一緒にまき散らす。
 ブドウの実に裂け目が出来たり、傷口から液体が流れたりすると、ショウジョウバエは大量に発生し、卵を産みつけ、急速に増殖し、倍増する(雌はその短い一生のうちに、500から900個の卵を生む)。1-3日後に生まれる幼虫は、果肉の中で、三つの形態へと変化する。もしも適切な天候の下であれば、10-12日後には新しい世代が誕生する。ショウジョウバエは指数関数的に増殖する。このように絶えず、無数に増える蝿は酢酸を伴う微生物を大量に感染し、拡大させる危険性をはらんでいる。
 ブドウ畑に現れ、酢酸腐敗を起こすショウジョウバエは二種類存在する。Drosophylla melanogasterとDrosophylla simulansである。これらの蝿は果実の中で生育し、夏の間は果樹園で過ごし、その後にブドウ畑にやってくる。Mouche des fruits(日直訳;果実蝿、英:fruit fly)とも、Mouche du vinaigre(日直訳:ヴィネガー蝿)とも呼ばれる。
 これらの蝿のみが、酵母とヴァクテリアを媒介するわけではない。ブドウの実に排泄物と一緒にそれらを残すネマトード(線虫)もその媒介者である。裸眼では見えない、各種のネマトードは、酢酸腐敗した実の皮に発見できる。Turbatrix aceti種が、南部のブドウ畑の品種においてよく見られるネマトードである。イタリアでは、Panagrellus zymosiphilusと名付けられたヴィネガー線虫が、ヴェローナ地区のブドウ畑でしばしば発見される。

 感染は、ショウジョウバエが酵母とヴァクテリアを皮においた時点から始まる。そして酢酸を発生させるアルコール発酵を引き起こす。暑く湿気の多い天候であれば、傷ついた実に集まってきたショウジョウバエが次々と増殖して、微生物を次々と運び、感染は爆発的に増える。感染は、雨がなく、湿気のなくなった期間に停止する。

http://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:Drosophila_melanogaster_-_side_(aka).jpg
(ショウジョウバエの写真参照)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:Ascaris_lumbricoides.jpeg
(ネマトードの写真参照)


発症しやすい畑

 酢酸腐敗はしばしば、暑く湿気がちで、傷ついた実のある、同じブドウ畑にて発生する。
 傷跡:ブドウの皮の傷跡に、養分が流出し、微生物の活動において有利な条件が整う。過剰な水分によって繊細な皮が裂けて小さな傷がついたり、雹によって傷ついたり、ウドンコ病による傷、ハマキガによる傷、蜂による傷などが考えられる
 品種ごとの感受性:かかりやすい品種は、実がギッシリつまっているためCarignan,Grenache,Muscatなどで、皮の薄いCinsaultや、またそれとは違った理由から、ChardonnayやPinot系品種も挙げられる
 樹勢の高い畑:ブドウがよりぎっしりとつまっていて、実が傷つきやすく、葉も多いため湿気がたまりやすい
 気候条件;雨期で暑い時期のブドウに湿気の溜まりやすい夏場に起こりやすい。湿気の高いもとで、端の樹に蝿がたかりやすく、病気になりやすい。
 ブドウのエクラリッサージュ:地面にブドウの実を落としたままにしておいても病気が発生しやすくなる

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腐敗末期状態。実はオレンジ色に変わるか、水分が抜けてカラカラになる。そして悪臭を放ち、周りにはショウジョウバエが飛び交う。


病気を防ぐためには

 畑の樹勢を減らすことが肝心で(カヴァー・クロップなど)、ブドウの換気をよくする必要性(きちんとした整枝、実のなる部分の適度な除葉)がある。そして、ベト病とウドンコ病をしっかりと防ぎ、ハマキガなども除く必要がある。


発症後措置のために

 銅散布;実の皮と傷跡を固める。なかなか効果的で、50%-60%の成功率がある。色付きの頃、ブドウの房にボルドー液を10-12日の間隔で2-3回撒く。量は少しづつ減らす(15kg/ha,10kg/ha,7-8kg/ha)。
 殺虫剤:これだけで効果的であるわけではないが、ショウジョウバエの成虫が現れると同時に行ない、1週間後にもう一度行なわなければならない。ショウジョウバエはすぐさま抗体を備える習性があり、殺虫剤の種類は色々混ぜなければならない。Deltaméthrine(DécisもしくはPearl)、Lamba cyhalothrine(Karaté)を使う。
 
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   腐敗した実を潰すと、オレンジ色に変色した果梗が残る。腐敗した実を取り除かない限り、酢酸が残る危険性が高まるために収穫の際に必ず除かなければならない


総括

 Mildiou(ベト病)やOïdium(ウドンコ病)はどちらかと言えば収穫量に影響を与える病気であるが、このPourriture Acide はワインの品質に影響を与える病気である。
 腐敗した実が混入することにより酢酸量が増え、かつ揮発酸の値も増える。これを防ぐためには亜硫酸を加えなくてはならない。勿論、今日の醸造技術をもってすれば、マストが酢に変わるということはありえない。しかし、限りなく自然なワイン造りをしたい造り手にとって、この腐敗は絶望的である。亜硫酸の量を減らすということは、ヴィネガーを造るリスクと、揮発酸の高いワインのリスクと隣り合わせだからである。
 大切な事は栽培段階において防除をしっかりすることと、収穫の際に徹底的な選果をすることである。防除といっても、年ごとにバラツキがあり、収穫期にこの病気が如何に残っているかで、栽培時の力量が問われる。







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[ 2011/09/30 03:39 ] 栽培 | TB(0) | CM(1)

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[ 2011/12/08 15:45 ] [ 編集 ]

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