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日本のワイナリーの今( 新潟 & 滋賀 )




 最近、日本のワインが美味しい。
 一昔前まであった、ヨーロッパ・ワインを似せたスタイルとはひと味違う、新しいスタイルが生まれて来ている。それは、日本らしい品種の選択であり、亜硫酸を最小限に抑えたワイン造りであり、低アルコールのワイン造りである。海外のワイナリーで研修していた若手が自国に帰り、自国なりの味わいを模索した結果であり、これまで以上に、国内でワインが消費されるようになった結果なのである。
 ワインの味わいの世界的な価値基準も大きく変わった。もはや、フランス的なワイン造りが、イコール高品質、と思われる時代ではない。それぞれの国の料理、風土にあったスタイルのワインが作られるようになった。

 今年の日本の新潟と滋賀のワイナリー訪問から得た情報をもとに、今日の日本ワインのあらましを考察してみた。



Hitomi wine
昔に比べ、実に多くの種類のワインが増えた。個性的なラベルのワインが多い。




一、 新潟


 新潟の海岸沿いを走る。新潟市から燕市へ向かって約30分。松の木並みの向こうに砂浜が広がり、さらに海の向こうには佐渡島が見える。だがさほど磯の香りはしない。8月だというのに海岸沿いのビーチに人影はあまり見えない。まだ朝方だった所為かもしれないが、意外と人がいないと思った。そういえば、この当たりが岩石海岸が続くため、波が強いのだろう。遊泳禁止マークもあった。


Cave dOcci



 角田のカーブドッチ・ワイナリーに着くと、先の海岸とは打って変わって、観光客で溢れていた。駐車場は車で一杯。フランス風パン屋、石釜で焼いたピザ屋、温泉、ホテル、そしてワイナリー。あまり純日本的な光景ではない。そう、ここは、ちょっとしたナパ・ヴァレー、日本の新たなるワインカントリーなのである。何もない砂地だった、この場所にワイナリーが始まったのが、約20数年前のことだった。カーヴドッチワイナリーを始めとして、新たなるワイナリーが次々と生まれ、この地は俄にワイン生産地としての新しい雰囲気を醸し出している。

 1992年、落希一郎によって、カーヴドッチワイナリーは創設された。日本でも世界に通用するワインを生める、という信念の下に、彼は日本中を渡り歩いて生産地を探した。そして最終的に、新潟を見いだしたのは天啓であった。米の生産地というイメージが強い新潟が、ワインにおいても名産地だとはとても思えない。事実、私自身、新潟でワインを作っているなんて、知ってもいなかった。しかしながら角田の地は、他の新潟県の中でも特殊な場所ではあった。角田山(弥彦山塊)と海を挟んで佐渡島に囲まれているおかげで、降雨量・降雪量が少ないのだ。ちょうど、アルザスとバーデンがそうであるように、両端の山地に囲まれているお陰で、葡萄が成熟する環境が整っている。さらに他の作物の育ちにくい、不毛な砂丘地帯であった、この角田の地は、新潟のどの場所とも違っていた。そう、つまり葡萄栽培に適した場所だったわけである。


Cave dOcci vigne
葡萄の苗木一本を一口一万円でオーナーにするというシステムで資金を集めたという。有機農法による防除剤が撒かれて、綺麗に整理された葡萄畑。向かいに見える山は角田山。



 畑に案内してもらった。整然とされた垣根の畑が広がっていた。ここは日本でもかなり早い時期から、欧州風の垣根仕立て方を実施されたところでもあるのだ。「棚仕立ての畑も少しはある」との事だったが、カーヴの周りにはそのような場所は見えない。全8haの所有畑が、すべて砂地の土壌。すぐ南側には角田山の頂きが見える。砂地であるので、フィロキセラの心配が少なく、畑はすべて自根で植えられている。自根の多いドイツでワインを学んだ、落氏がそれを続けたことが、結果的にワインの品質を上げた。


Cave dOcci vin



 このワイナリーが20年の年月をかけて培った努力・研究の成果は、各種の品種の改良であり、品種の選択であった。まだ未開の地であった場所で、そこに相応しい葡萄品種を選ぶことは困難を極めるのだが、「欧州品種」のみを使うという哲学のもと、長い期間をかけて葡萄品種が選ばれた。40種類も試したという中でも現在最も優良だと彼らが考えている品種は、スペイン産のアルバリーニョ(Albariño)である。この地は「昼と夜の寒暖差が少ない」ので、アルバリーニョの強い酸味は柔らかくなる。さらに「海に近く、海風が多い」という個性があり、そういった面がスペインで最もこの品種が植えられているリアス・バイシャス(Rías Baixas)に近い風土なのだろう。色々なワインを生産しているが、試飲したもので圧巻なのがやはり、アルバリーニョ2015年。芯が強く、ミネラル感たっぷりなワイン。微かな塩味となによりも口の中で弾ける滋味が圧倒的。お造りにピッタリのワインである。それと気になったのが、掛川栽培・醸造長が、独自の観点からつくっているワインの、「動物シリーズ」。「くま」、「みつばち」、「あなぐま」…などの、キュートなタイトルとラベルをつけられ、いずれも亜硫酸無添加で、幾分実験的な手法で作られるシリーズで、従来のカーブドッチ製のワインとは方向性が異なる。しかしながらいずれも決して侮れない品質の粒ぞろいのキュヴェで、将来のワイナリーの方向性を意欲的に模索しているのが見て取れる。これらのワインはいずれもソールド・アウトの人気商品である。

 カーブドッチの成功に呼応して、日本中から有望な若手生産者がこの地にやってきた。そして、各々がワイナリーを開くことになり、いまではカーブドッチの他に4軒のワイナリーが隣接している。フェルミエ(2006年)、ドメーヌ・ショオ(2009年)、カンティーナジーオセット(2013年)、ル・サンク・ワイナリー(2015年)がそれである。彼らはお互い、助け合いつつ、ライバルであり、ともに新潟の角田の地のポテンシャルを最大限に引き出す努力を続けている。

           Domaine Chaud
ドメーヌ・ショオの小林英雄氏。「角田は素晴らしいテロワールだ。この個性的な砂地に相応しいワインをつくるのが良い。だから、Cabernet Sauvignonを使って重いBordeauxスタイルのワインを作ろうとするのは間違っているし、軽口の Pinot Noirも違う。その中間の、サラサラな味のCabernet Sauvignonを作るのがちょうどバランス良い」。一度喋り始めたら止まらないハイテンションな、彼のワインはいずれも、旨味とコク、出汁感(生産者弁)に溢れる素晴らしいワイン。




二、 滋賀


 私の実家は京都市であるが、山奥の村の出で、滋賀県にも近い。うちの裏山を上れば、20分ほどで、琵琶湖を拝める場所にある。そんな滋賀県で作られるワインが美味しい、と聞いて、何か心踊るものがあった。まさか、自分の生まれた場所の近くにも、素晴らしいテロワールが広がっていて、美味しいワインが造られているのだと知って、驚いた。


Biwako.jpg



 滋賀県にはまだ 2つしかワイナリーがない。その一つ、ヒトミワイナリーは滋賀県の東部、永源寺にあるワイナリーである。25年前に、アパレルで名をなした図師禮三が、故郷の滋賀県にワイン文化を根ざそうと思い立ってつくった。ワインだけでなく、竃で作られているフランスパン目当てで訪れる観光客も多い。


Hitomi Winery
創業25年だが、滋賀県産の自社畑は1.5haにすぎない。基本的に日本各地の葡萄畑からの買い付け葡萄のみでワインを生産し、亜硫酸無添加のワイン造りを続ける。


 さて、このワイナリーのワイン造りは非常に変わっている。「にごりワイン」というカテゴリーを主軸に掲げているのだ。「にごりワイン」ということで、濾過せず、さらに「亜硫酸無添加」のワインつくりで、いわゆる自然派スタイルなわけであるが、昨今のブームにのってそうしたわけではない。当時、醸造責任者を任された岩谷澄人氏は、経験のないまま教科書的なワインを作り続けて来たが、そのやり方に疑問を感じ、自分が美味しいと信じる無濾過ワインというものをリリースした。それが、この時代には、爆発的とは言えないまでも、功を奏し、その路線でワインが作られることになった。教条的・画一的なワイン造りが決して良い結果を生まないと、今の日本のワインを見ててもわかる事なのだが、彼らはいち早く、自分たちの個性を磨くことに努めた。20年以上も亜硫酸無添加のワインを造り、このカテゴリーにおいては日本で最も古い生産者の一人である。


           Hitomi,M.Kurita
今回の試飲を通して、ヒトミワイナリーを紹介してくれたソムリエの栗田智史氏。「亜硫酸無添加ワインを作り始めた頃は、色々と揶揄されたものです。ここ数年になって、ようやく我々のスタイルが世に認められるようになってきました」。当ワイナリーの醸造責任者であった、岩谷澄人氏は、2016年の4月に退社された。このワイナリーの革新的な生産を続けた人物だったが、岩谷氏の意思は後続のワインメーカーに受け継がれて行くのであろう。実際、日本のワイナリーで働く人々は皆とても勤勉な方が多くて、非常に突っ込んだ質問にも、スラスラ答えていただけて、嬉しかった。



 「弊社のワインはすべて、ラブルスカ品種を主体に使っています。たとえメジャーな欧州品種を使っても、本場のワインには及ばない。ならば、日本らしさを追求した品種選びを続けたいと考えています」
 「フォクシーフレーヴァー」という、狐のような香りが鼻につくということで、嫌われ続けたアメリカ原産のラブルスカ品種。しかし、日本人にとって馴染みのある「葡萄らしい」香りでもあるというのが、岩谷氏の答えであった。大切なことは、無理をして国際社会に迎合した品種を使うよりも、実際に試飲してみてこれは美味しい、と思えるワインを作ることが大事なのだ、と。だから、この造り手のワインはすべて、素直な旨味に溢れている。何も難しく、にらめっこして、このワインのどこが美味しいのか分からないと、試行錯誤して飲むワインではない。
 白ワインは、数種類あるが、山形県産デラウェアが素晴らしい。スダチを思わせる柑橘類の香りに、梅干しやカツオの旨味、そして高い酸味。ラベルに「かなり酸っぱい」の表記があるものがあり、2014年産のpHはなんと2.9以下。Cuvée KireDelaは発酵中に冷凍化させて分離した果汁だけで発酵を続けの特殊キュヴェ。アルコールは16%にも達し、凝縮の極地で、ChampagneのCôte des Blancsを思わせる香しい香り。素晴らしいの一言。
 赤ワインは、マスカット・ベリーAの果実味に驚かされる。カツオの香り、ハモの梅肉的なニュアンス。幾分、MC法的な造りのものが多いのでフレッシュでジューシー、飲み易いワインである。あらたにリリースされる Shindo Funiシリーズは、「身土不二」という字を書き、地元で生まれた酒は地元で消費されるべきだという仏教用語にちなんだワイン。契約農家ごとにキュヴェが作られ、それぞれのテロワールを反映、滋賀県らしさを追求する。「今の所、東京のマニアな客層にしか売れず、本末転倒」だそうで、最近は売るのを少し制限しているとか。土っぽい味わいと、チェリー香満載のマスカット・ベリーAの美しさを表現。


hitomi h3 series
ヒトミワイナリーのフラグシップとも言えるワインは、h3シリーズ(papillon,ihkaku,Caribou,Kumagera)。にごり・亜硫酸無添加・ラブルスカ品種のみ・微発砲、とあらゆる要素が日本料理に完璧にマッチする。例えば、凝縮した旨味を閉じ込めていて、優しい果実香を秘めやかに香らせる h3 ihkaku(イッカク)は、赤身のマグロ、クジラの刺身にぴったりと合い、近江牛のしゃぶしゃぶとも良い相性だった。




三、 日本料理にあうワイン




           Biwako Winery
           もう一つの滋賀県のワイナリー、琵琶湖ワイナリー。


 ずっと、日本料理の食卓にはビールが合うんだと錯覚してきた。しかし、フランスでの生活を経て、改めて日本の食文化を顧みると、ビールは決して日本料理に合わせて飲まれていないことが理解される。日本料理は、基本的に汁物や吸い物とセットにして食べられるので、必ずしもアルコールを必要としていない。ドイツのビアホールのように、ソーセージに合わせてビールを飲んだり、イギリスのように、フィッシュ&チップスにスタウトに合わせるなんていう飲み方ではない。日本のビールの飲み方は、とりあえず一杯、湯上がりに一杯、の文化であって、料理と一緒という風に考えられていない。それでもビールと合う料理というのは、枝豆であったり、唐揚げのようなもので、日本料理をひとくくりにすることはない。カレーとビール? 牛丼とビール? お好み焼きとビール? 実際のところ、それ以外の飲み物の方が合うのがよくわかる。そしてその実、その場所にワインという飲み物が入る余地が生まれるのだ。
 ラブルスカ主体の赤ワインは、還元的な性質とともに、全房発酵由来のカツオ的な旨味がつまっている。これがお造りと良く合う。それも、赤身の鉄分を含んだ部位、マグロ、カツオ、クジラ、馬刺…。デラウェアの酸味は、魚料理全般に合うだろう。魚の臭みを消すためにスダチをかけるような要領だ。日本ワインが全体的に低アルコールであることも、食卓にはピッタリである。アルコールの高さで繊細さを消さないで、残るのも良い。どちらかというと、ヴィニフェラ品種よりラブルスカ品種の方が、料理に合いそうな印象である。

 このように、日本のワインも刻一刻と変化・改良・日本化している。そう、各国の料理を次々と日本化して育って来た日本食というものは、意外と懐が広かったりするのである。ラーメンや餃子、パスタなどなどは、もはや日本料理の一部である。日本人は世界中の美味しいものを自国に取り入れるという事に関して、非常に開放的である。そんなにえり好みしないで、とりあえず自国化する。そうして、自国風に解釈して、新たなる料理として生まれ変わらせる。そういう風に考えると、ワインという飲み物が、日本食の一部になることは、あながち無理難題でもなかったのかもしれない。新しい時代に対応した、日本風のワイン。世界中で、日本食がブームになっている今日の状況を鑑みれば、日本ワインがそれとセットして世界に迎え入れられる日がきてもおかしくない。


           Red Millerennume
琵琶湖ワイナリーのレッドミルレンニュームという品種。国内でもわずか2軒しか使っていないという希少な葡萄。ちょっとしたGewurztraminer(ゲヴュルツトラミネール)とMuscat(ミュスカ)の果実味と、Sylvaner(シルヴァネール)と甲州の淡さを掛け持ったような、実に個性的で素晴らしい味わいの品種。
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[ 2016/09/09 00:24 ] 産地 | TB(0) | CM(0)



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