スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

Visit Report;35 Domaine Marc Kreydenweiss à Manduel

Visit Report;35 Domaine Marc Kreydenweiss à Manduel

 Alsace初のビオディナミストとして知られるKreydenweiss家は、1999年に南仏Nîmesから10kmほど東のManduelに葡萄畑を購入した。以来、この一家は二つのワイナリーを切り盛りしている。当主の Marc Kreydenweiss自ら、Manduelに移り、妻の Emmanuelle, 三男 Jean, 長女の Julietteと共に新しい人生を開始した。私は2011年に、AlsaceのKreydenweiss家で働いていたこともあり、Marcは元パトロンでもあったわけだ。Jeanとも既知であり、彼がAlsaceにいた時に、一緒に働いていた仲でもある。以前から、機会あれば是非とも訪問したいと思っていたワイナリーだった。

           IMG_2564.jpg
Marc Kreydenweiss。Alsaceワイン界のきっての知識人。それにしてもアルザス語なまりでフランス語を話す彼が、ラングドック方言で話すフランス人と働くのは少し可笑しい。

 Costières de Nîmesというアペラシオンから彼らのワインは生まれる。「Costières」とは溝を意味する言葉で、北から南へと流れるRhône河が、地中海に流れる最後のデルタ地帯を称した言葉として用いられる。なだらかな丘だが平地に近く、標高50mの穏やかな勾配が広がる。
「ここの平地をみてごらん、今は、荒れた不毛の地に見えるかもしれないけれども、ずっと葡萄畑が広がっていたんだ。それが4-5年前には、すべて打ち捨てられてしまったんだ。この地では、だんだんと葡萄栽培に適さなくなっているのかもしれない」車で迎えにきてくれた Jeanはそう語った。
ここより南の Languedoc全体の地区において、栽培面積が年ごとに減少していて、その一例を垣間見た気がした。

           IMG_2556.jpg
   樹齢100年にも達するCarignanの自社畑。ちなみに、Châteauneuf-du-papeの葡萄を買うのみで、他はすべて自社畑。

 Nîmesを車で離れること約15分ほどして、畑の真ん中に建てられた一軒家に到着した。20haにもなる葡萄畑とオリーヴ畑の真ん中に、Marcの築き上げた夢の楽園がそこにあった。ドメーヌの周りはすべて自社畑で、Goblet仕立てとCordon Royat仕立ての葡萄の木々が見いだせる。
 畑を見ながら、Costières de Nîmesというアペラシオンについて思い返した。いつも試飲会で、この地のワインを飲む度に、がっかりした記憶しかない。薄っぺらで、味わいの生彩に欠いた印象しか残っていない。このアペラシオンはなくてもいいのではないかと本気で自問自答したこともあった。平均収量57hl/haという高さも品質の低下を招いているのだろう。しかし、そのような気の迷いを、一瞬にして振り払ったワインに出会った。それが、Marc KreydenweissのPerrières 1999であった。彼のファーストヴィンテージのワインである。試飲したのは確か、2007年ごろであっただろうか。素晴らしい熟成を経て、円熟を迎えた南仏ワインの秘められた力を、私に見せてくれた。

           IMG_2566.jpg
Costières de Nîmesは赤ワインの産地と思いがちだが、比率は赤52%、白8%、ロゼ40%と、ロゼの比率は非常に高い。

 彼が Costières de Nîmesに来て以来、一躍トップワイナリーとなったのは、アルザスで培った厳しい醸造哲学があったからこそである。Marcが持ち込んだのは勿論、ビオディナミという農法である。自然のリズムを尊重し、ワイン造りの基礎とする手段。有機肥料のみを使用し、SO2の使用も最小に抑える。月カレンダーに従った仕事の段取りを心掛ける。そしてそれだけでなく、優れたワイン作り基本として、6つの黄金律を守っている。1) 収量をコントロールするための短い剪定、2) エブルジョナージュ、 3) エクラリッサージュ、 4) 風通しのためのエフイヤージュ、5) 選果しながらの手摘み収穫、6) 除梗した後の選果、である。

           coupe geologique orangee
地図左側の崖の上からLanguedoc、右側の断層の下は、氷河期のRhône河の堆積物の影響下にあることが理解できる
(Source: http://www.costieres-nimes.org/content/index-35896.php)


1986年からアペラシオンに認定され、現在3482haの面積を持つCostières de Nîmesは、厳密にはLanguedocのワインではない。行政的にはLanguedocの中に位置してはいても、地勢は明らかにCôtes du Rhôneの影響下にある。本によってRhôneに入れられたり、Languedocに入れられたりと非常にややこしいが、2006年よりCôtes du Rhôneワイン協会の管轄下にある。土壌は、Châteauneuf-du-papeや、Hermitageと同じく、鮮新世の氷河期にRhône河から流れて来た、様々な石ころ(Galet Roulée)によって形成されている。鉄分を多く含んだ赤い粘土の土に、数多くの岩石の石ころが覆い尽くしている。Languedocワインはその少し上方、Nîmes市にあるNîmes地溝の丘の上から始まる。遥か昔、気の遠くなるような昔に、漸新世から中新世の間の地殻変動によって分たれた違う土壌。Nîmes北部の隆起した土壌は白亜紀の純粋な粘土質石灰と泥灰岩の土壌が残ったのに対し、その下部は、地核変動の後の鮮新世に、Rhône河の運んできたより北の岩石成分の堆積物で満ちている。実際のところ、 Manduelから、最初の LanguedocのアペラシオンのLangladeまで、約20kmしか離れていないにも関わらず風景はまったく異なっている。標高が50mと低いことも相まって、より温暖な地であるばかりでなく、優れた排水性を持つGaletを多く含んだ、Costière de Nîmesは、標高が200mのLangladeよりも構成がズッシリと重い。それでいて爽やかなのは、地中に水分を保有する粘土が豊富だからである。さらに多種の石ころの持つミネラル分に富むためにより複雑な味わいを与える。

           IMG_2599.jpg
   Nîmesの絶壁はおよそ10m位だろうか、しかしこの断層の差こそがLanguedocとRhôneのワインの境界となっているのである

「Galet roulé はRhône河が運んできた様々な土地の岩石だ。石灰だけじゃなくて、石英や、シレックス、それにヴォージュ山脈の砂岩すら見つかるから驚きだよ。実にこれらのGaletがワインに大切なミネラルの味わいを与えてくれるんだね。」 Marcはこの地の驚くべき多様性を力説する。Galet Roulée(石ころ)は、非常に長い年月を越えて、激流に流され、転がりおちてツルツルまでに丸まった岩石の総称である。だから、色々な原料の石が存在し、それぞれが多様なミネラルを含有しているということである。さらに優れた排水性を持っている。それと同時に、地下には優れた保水性を持った赤い粘土質の土壌が存在する。「Galet Rouléeの土壌という点では、Châteauneuf-du-papeにおいて、最も複雑な味わいをもったワインを作る事が出来る。Costières de Nîmesは他に比べ、よりChâteauneuf-du-papeに近い土壌である事は間違いない。しかし、もっと鉄分に富んだ地質で、それがワインにもっと多くの色調を与える。しかも、この土地は非常に肥沃だ。何もしなくても、収量は100hl/haに達するんだよ。だから、収穫量を抑えよう、濃縮した葡萄を作ろうと努めないかぎり、決して品質に優れたワインができることはないんだ」

           IMG_2572.jpg
   一つの畑で見つけ出される Galet roulée。石灰、石英、シレックス、そして遥かAlsaceの地から姿を変え流れ着いた砂岩。

 収穫量が高く保たれているならばと、それと関連して、最近の南仏で盛んに行なわれている灌漑について聞いてみた。
「灌漑することは非常に馬鹿げたことだと思っている。この地は灌漑などしなくとも、多くの収量を約束されているのは数字を見ればわかることだ。栽培家は自分たちの最低限の収入を守るための保険として灌漑を行おうとしている。優秀な造り手は灌漑のような、土地の味わいを損なうことは絶対にしないものだ。というのは、葡萄の根が伸びようとするのは、適度の水分要求ストレスがあるからで、水が常に与えられるようになれば、葡萄の根は活動をやめてしまうだけだ。葡萄畑に灌漑を施すという事は無個性はワインを作るという事に等しいことだ」と、灌漑に対しては断固として否定的である。「もしも灌漑が必要な状況になるのならば、そこは葡萄を栽培するのに適さない場所になったと判断すべきだ」

           IMG_2598.jpg
Nîmes上部の先の断崖の上部で見つけられる白亜紀の石灰岩の壁。もともとオレンジがかった岩石だが、太陽にさらされた部分は黒ずんでいる。

 各テロワールには、それぞれに相応しい品種がある。長い天候の変化、風土の変化に見合った、品種が見つけだし、選ばれてきて今に至っているのである。Kreydenweiss家にも非常に沢山の品種がある。Carignan、Grenache、Syrah、Mourvédre。
「この地に適する品種はMourvédreやGrenacheであると思っている。Mourvédreなどは中世にも既にあって、Le plant de Saint Gillesと呼ばれていたんだ。Grenache100%はブレンドして初めて力を発揮すると感じる」
しかし逆に、Marcの言っていることから、本当に作りたいワインのイメージと、現状の品種から作られるワインには違いがあるように感じる。Grenacheなどが適正であるとは信じていても、彼のワインの主力は二つの単一葡萄ワイン、Ansata(Syrah100%)とKa(Carignan100%)であるのだから。「百年以上生き残っているCarignanを使ったワインを作ることは、今の流行だね。しかし年々、老衰で、古樹は死んで行くが植え替えるつもりはない。それでもこれらの樹を守って行くことはとても重要だと感じる」

           IMG_2563.jpg
   Goblet剪定による畑。下には、Galet Rouléeがびっしりと転がっているのを見て取れる。

「風の強いこの地でも、Goblet剪定を行うのは、それが理に適っているからだ。Carignanは、枝がまっすぐに伸びる品種で、ちょっとの風が吹いてもびくともしない。むしろ、この地に来た時にCarignanを違う剪定にしようとして酷い失敗をしたものだ。葡萄によっては枝がまっすぐ伸びるものと、横に落ちて行くものとあって、それぞれは異なった成長をするのである」「Mourvédreなどは、Gobletだが、ワイヤーを設置して、そこに括り付ける。SyrahとGrenacheはCordon。」

           IMG_2569.jpg
   アルザスから持って来たフードルも用いる。コンクリートタンクで発酵し、赤はバリック、アルザス式フードル、Demi-Muidsなどを使用する(全除梗)。白はステンレスタンク(MLFは行なわない)。

 醸造において彼は、ブレット(ブレタノミセス)の問題について一番注意を払っているという。ブレットは、悪性の酵母であり、主に葡萄(特にCarignan)に存在する。少量であれば、ワインに複雑味をもたらすが、これが支配的になることでワインの味わいを大きく損なってしまう。Emmanuelはこう語る。「ここ数年の経験によって漸く、ブレットの発生の条件をつきとめてこれました。低温で発酵を始めることで、他の自然酵母よりもブレットの量が多くなるのです。発酵をすぐに始めないで、安置しておくことが危険なのです。低温マセレーションなどといった方法は、ブレットの生成を助長してしまうのです。もはや我々は低温で葡萄を放置することはなくなりました。ブレットを発見した場合は、即、温度調節をして対処します」。ブレットは何もRhône周辺に限った問題ではない。「Bordeauxでも、Bourgogneでもブレットの危険性はあります。最も、他の地方ではブレットの危険があれば、酵母を殺そうと処置するのでしょうが。我々、ビオディナミを行なう者にとってはブレットの量が多くなればアウトですので、定期的にチェックすることが必要になります」

           IMG_2582.jpg




Dégustation en barriques(樽からの試飲)


Carignan '12: 還元香が強く香る。シンプルな味わい。まだまだワインとしての体裁は整えていないといった恰好。
Mourvédre '12; Carignanに比べ、還元はより弱いが優しい味わい。それほど主張するような力強さがあるわけではない。キュヴェGrimaude用のワイン。
Merlot '12: アロマティック、より男性的で、荒削り。味わいは今最も良いが、余韻と構成感に欠く。
Grenache '12; 甘さ、ストレートな味わい。濃密な濃さを持つわけではない。より丸く繊細になっている。
Syrah (barrique 225l, pour Ansata) '12; スパイシー。レグリッス。味わいの深さ。がっしりと複雑な味わいを残す。非常に品質の高いものであると知れる。
Carignan(demi-muids pour KA) '12; 強く、あと引く余韻の長さ。果実味の出方はSyrahのように派手に広がるわけでないのに、真っすぐに香る。伸びやかで綺麗。流石に100年生きたCarignanの濃度は違う。

           IMG_2574.jpg
   Carignan用のDemis-Muids。後ろは発酵用のコンクリートタンク。

Dégustation en cuves (juste avant de la mise en bouteilles)(タンクからの試飲)

Grimaude '11: 味わいの一体感が整い、瓶詰めの準備は整っている。複雑ではないが、美しい果実味があり、心地よい。フルーティー。
Perrières '11: 統制感のある味わい。バランスよく伸びる。「しかし昔と違って、今では最良のパーセルのものを使っているわけではない」為に、昔のPerrièresが持っていた味わいの深さが少し減った。Perrièresはもはや、昔のものと同じ熟成能力を秘めるわけではない。
Ansata '11: とてもフルーティーだが、素晴らしい品性のある味わい。'12にあった強いスパイス感が抑えられている。ハリがあって、強い伸び。なぜ、タニックさがあまり出ずに、優しく丸い味わいがでるのかという問いに、「それは、'11年からファーストプレスのジュースのみを使うことにしたから」なのだと言う。「残りのプレスは格下のワインに使うのではなく、すべてバルク売りしている。こうした方が、自分の名前で造っているワインの品質を少しでも守ることができるからね。」
Ka '11; 丸く、Ansataよりもスパイシー。しかし、味わいの表現力に乏しい。

           IMG_2575.jpg

Dégustation en bouteilles(ボトルからの試飲)

Perrières '10: やや、ぼやけた味わい。凝縮感に欠く。強い果実味があるわけでなく、バランスは良いが弱い。やはり、良質のSyrahがブレンドされないとリッチさを欠いてしまうのだろうか?
Ansata '10: 果実味の強さと、主張があるものの、まとまりに欠く。渋くなく、ただ重い。
Ka '10: '11とは違って、'10においてはKaの方がAnsataよりも好印象。この年までは、ファーストプレス以外のジュースを使用したAnsataは味わいに柔らかさが足らなかったからなのだろうか?
Châteauneuf-du-pape '08: ネゴシアンもの。100%Grenache。円やかで繊細。アタックの強さはなく、エレガントで軽い。Grenacha本来の赤果実がピュアに香る。浮遊感のあるChâteauneuf.。




           IMG_2559.jpg


 何故、Marcはこの地を第二の人生の場所として選んだのだろうか?
別にAlsaceとは違った、ワインを作りたいのであれば、他にも産地はあったはずだ。BourgogneやBordeauxではいけなかったのか? 特にMarcはBourgogneのワインの大ファンである。昔はHenri Jayerのコレクションをしていたというし、今でも、素晴らしく繊細なワインを見つける度に「Bourgogneみたいだ」と言ってる位だ。
 しかしながら、今回の南仏のワイン産地の訪問を続ける中で少しずつ理解されてきたことは、南仏の産地は、まだまだ穏やかな変化を続けている地だということだ。パルク売り用ワインの産地、安飲みワインの産地でしかなかった南仏には未だ、BourgogneやBordeauxなどの産地の持つプレスティージュ感も、飛び抜けたエレガンスを持ったワインはまだ生まれていない(ほとんど無い)。一昔前こそ、新たな産地の発見という謳い文句で売られ続けてきて、その熱に浮かされた感じにひとまず落ち着いた感がある。それでもこの産地には強い可能性、未来への展望が残っている。BourgogneやBordeauxのワインの優良畑はすべて解明つくされ、ともすれば名前だけ先行した不埒なワインが作られ続けているのに対し、南仏の葡萄畑にはまだ未知の要素が沢山つまっている。今、この地で素晴らしいワインを作り続ける生産者は、もともとこの地に根ざした者であることが多いのに気付かされる。共同組合用の葡萄を造っていた父親や、他業種の者、そして他の産地からの移住。近年では Anne GrosとJean-Paul TollotがMinervoisでワイナリーを起こした事が記憶に新しい。南仏は大いなる可能性を秘めた場所である。しかしワイン生産の為には膨大な時間がかかる。結果がすぐに出ることはないのだ。まだまだ優秀とされる造り手の年の若さや、彼らのワインの実験的な性質が見て取れて、結論を急ぎすぎるべきでないと感じる。
 皮肉にも、Marcのファースト・ヴィンテージはすでに私の南仏ワインの印象を変えたわけであるが、今の彼が造っているワインがベストではないと感じてもいる。現在の彼のAnsataやKaは、Marc自身がこの地に最も適した品種を使っているわけでないことからも明らかである。本当の意味で、彼のGrenacheやMourvédreが育った時に、今のAnsataを越えるPerrièresが生まれるのではないかと感じている。何事も焦りは禁物なのであると思う。私はCostières de Nîmesのワインが未だかつてない高みに登り詰めることができる日がくると信じて、待ちたいと思う。Marcの第二の挑戦は、続く。


           IMG_2560.jpg



資料
Jacques Fanet, Les Terroirs du vin , 2008, Hachette
Benoït France, Grand Atlas des Vignobles de France , 2002, Solar

ネット資料
http://www.kreydenweiss.com/
http://www.costieres-nimes.org/content/index-35896.php
http://www.vins-rhone.com/
スポンサーサイト
[ 2013/02/20 01:32 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(0)



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。