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Visit Report ;37 Château Haut-Marbuzet

Visit Report ;37 Château Haut-Marbuzet


「このシャトーのワインの味わいはすべて、オーナーのDuboscq氏が決めます」


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 Bourgogneのワイナリーが家族経営で成り立っていることと対照的に、広大な面積を覆うBordeauxのワインは大抵が大企業の形をとらざるをえない。一つ一つのシャトーのワインには、オーナーだけでなく、多くの関係者が関与している。レストラン業における、「街場レストラン」と「ホテルレストラン」との関係に喩えられるだろうか。Bordeauxのワインには、「オーナー」個々の名前が冠されることはなく、歴史的に存在し続けた、「城(シャトー)」を起点にしたワインが生まれる。その中でも、ワインを作る人がフォーカスされるのはしばしば「醸造コンサルタント(Oenologue)」である。「城」の味わいを尊重しつつ、醸造作業のプロたちが、それぞれのスタイルを生み出す。だからこそ、仮に「オーナー」が引退したり、交代したとしても、それぞれの「城」の個性は守られ続けるわけだ。Bordeauxのワインは長く、「オーナー」よりも「城」ごとの味わいの差が重視されてきた。しかし、この地に魅力的な「オーナー」がいないわけではなく、彼らの個性が反映されたワインが全くないわけではない。その中でも代表的なのは Château Haut-Marbuzetの Henri Duboscq(アンリ・デュボスク)である。

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 PauillacとSaint-Estèpheを二つに分つ Jaille(Médoc地方で「小川」を意味する言葉)が、Château LafiteとCos d'Estournelの間にあるが、さらにCos d'Estournelのすぐ北側にも小さな溝地があり、そこからMarbuzetの丘と呼ばれる大地が広がっている。ここはSaint-Estepheの中でも最良の区画の一つとされる。Marbuzetなる畑は、1770年にSylvestre Fatinなる人物が二人の娘、PétronilleとRoseに分割相続させたことによって名を知られるようになった。そして1825年、Jacobiteのアイルランド人のMacCarthy家が相続し、その名声は確たるものとなる。1848年、遺産相続の問題によって、畑は分割化して、Poissonier家がHaut-Marbuzetと呼ばれた7haの畑を所有することになった。しかし残念ながら、1855年のBordeauxワインの格付けの際には評価されはしなかった。やはり、この時代は小さな Châteauに注目があつまる時代ではなかったのである。時代は下り1952年、農業も醸造の経験もなかったHervé Duboscqがその畑を購入する。彼は Langon村のSNCFの副駅長だったが、当時のフランスは戦後でワイン業など見向きもされなかったために非常に地価が安かったのである。彼は独自の方法でワイン造りを行い、愛好家の心をつかんだワイン造りを行った。最初は7haしかなかったが、彼は一つ一つ畑を購入して買い足していき、かつてMacCarthy家の持っていた畑を再築しなおしていった。今では 75haの畑を有し、常時の従業員は40名ほどいる。その成功は、もしも格付け見直しがあれば、昇格は間違いないChâteauの一つと見なされているほどである。

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          Hervé Duboscqの肖像。息子のHenriとそっくり!

 Henri Duboscq(アンリ・デュボスク)。
1962年よりChâteauに参加し、1974年に父の跡を継いだ彼は、総責任者かつ、栽培責任者であり、醸造責任者でもある。畑ごとの品種選び、樽の選択、ブレンドはもちろん、マセラシオンの期間など、すべての決定は彼が判断し下す。研究室でアナライズした味は作りたくない。別に他の地方では当たり前のような事が、こういう大きなワイナリーでは逆に珍しい。「ワインメーカーは作曲家のようなものだ」と彼は言う。まるで音と音を繋げて調和をつくる作曲家のように、与えられた条件の中で、そのテロワールとヴィンテージのありのままの香り、味わいを生み出すことがワインメーカーの本質であると彼は考える。


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 Saint-Estèpheの土壌はギュンツ氷河期の砂礫質ではあるが、Médocの中でも最も肥沃で、粘土質である。このアペラシオン自体が一つの台地上になっていて、Château Lafiteから眺めると小高い丘の向こうに畑が広がる。だからこそ、水分ストレスを嫌うCabernet Sauvignon品種に適しているのは、アペラシオンの中でも排水性の良い急斜のある場所ということになり、格付けシャトーはアペラシオンの中でも隅側に集中することになる。では台地の上部にあって、斜面の少ないHaut-Marbuzetはやはりテロワール的に不利なのだろうか? 

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 Haut-Marbuzetの品種構成は、Cabernet Sauvignon 50%、Merlot 40%、 Petit VerdotとCabernet Francが10%である。Medocのワインとして、Merlotの比率が非常に多いのがわかる。先代 Hervé Duboscqが、50年代になって大幅にMerlotに植え替えたためである。鉄分まじりの粘土質石灰土壌にMerlotを植えるのは、実に理に適った選択肢であった。そして彼がもともと、ワイン生産者でも、メドックの人間でもなかったことによる、慣習に囚われない、自由な選択眼をもっていたからであった。近年でもSaint-Estèpheにおいて、Merlotの比率が多くなってきたとはいえ、「先代のDuboscq氏がMerlotを沢山植えた時代には、周りのChâteauから嘲笑された」という。Pomerolに似て、粘土が多く、タンニンが固くなりそうな土壌の下では、Merlotを多く植える選択は正しいはずである。逆に丘の上部であることの利点もある。ジロンド河から離れているために、霜の被害は少ないという。



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 栽培哲学は、有機農法に近いリュット・レゾネ。特に除草剤の廃止は重視しているところで、「自然酵母での発酵を可能にする鍵」であるという。だから鋤のついたトラクターで畑を耕すことは欠かせない。収穫は勿論、手摘みが原則。収穫人のその大半のメンバーはスペイン人で毎回、同じ顔ぶれだという。50年来、毎年来る者や、その息子、孫なども加わって、約2週間、100人程度で収穫される。いつも同じ収穫人だと意思の疎通もできやすいし、Haut-Marbuzetが求める完熟した葡萄のみの使用という哲学を守るために重要なことなのだという。



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植樹密植の割合は1haあたり9000本。最近ではHenri Duboscqのお遊びで、Merlotのパーセルに他の品種を混植してその味わいの差をテストしている畑もあるそうである。



 発酵用の槽は三種類ある。コンクリートタンク、ステンレスタンク、そしてフードル(木製大樽)。Duboscqが最も重視するのがコンクリートタンクによる発酵だ。それは自然酵母の発酵を促し、何よりも去年の発酵を起こした酵母が死なずに生き残っているのだとも考えている。「除草剤無添加による畑に残った新しい年の酵母が、コンクリートタンクに残っていた、前年までの古い酵母の眠りを呼び起こして、新たに発酵することが重要なのだ」という。事実、フードルだと自然発酵が起こりにくいそうだ。特に35度以上だと死んでしまう酵母は、暑い年には生き残りにくい。2009年のような暑い年には、フードルで自然に発酵することがなかったそうである。ファーストワインにはコンクリートタンクとステンレスタンクを使用し、フードルはセカンドワイン用である。
 

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抽出はルモンタージュのみ。


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          温度調整のためのステンレスタンクがついていて、これで35度以上にならないように調整する。



 彼の醸造哲学に、新樽を100%使用する一つの信念がある。樽香をつけること、ストラクチャーをつけることの重要性という意味ではなく、それが衛生的に良いからである。発酵の際には、前年の酵母が重要だといっていたのとはまた違った側面から、エレヴァージュ時には、衛生面に注意を払うわけだ。使用する樽は、パーセル・品種ごとに異なり、それも毎年変えるために、収穫の際に Duboscqの知識とインスピレーションで購入される新樽が決まる。エレヴァージュ時の樽の中のワインはすべて異なり、別々の個性をもつことになる。それらは約15-18ヶ月後にブレンドされ、瓶詰めされる。彼らは樽のスペシャリストであるから、樽の性質について彼らの考え方を伺ってみた。「Allier産はトースト香やヴァニラ香、Tronçay産はヴァルサミコやcédre(シーダー)の香り、Nièvre産は蜂蜜やシナモンのニュアンス、Vosge産は力強さ、Sarthe県のJupille産はフローラルさをそれぞれ与える。Limoge産はタンニンが強くなりすぎて、開くのに15年くらいもかかるような味になってしまうので使わない」。これらは三年間、外でシーズニングした木材のものを使用し、焼き加減は基本的にミドルを選ぶ。昔は焼き加減を強すぎた時代もあったが、何度も試行錯誤した後に、このような結果に落ち着いた。ノンフィルター、ノンコラージュなので、そのために三ヶ月ごとにスーティラージュを行う。したがって、一つのヴィンテージにだいたい5回のスーティラージュ。


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雹の降った2013年は33%の収穫減。2013年の使用樽は Taransaud社と,maury社のAllier(アリエ)かTronçay(トロンセイ)のみである。ちなみに1000樽当たり約1億円計算とのこと。


ワインの試飲


2007
グラスが立ちこめる香ばしいアロマ。丁字っぽいスパイス香がスッとあがってくる。実にSaint-Estèpheらしいとおもわせる陶酔感のある香り。味わいはまろやかでエレガント、とても長く残る。2007年はそれほど評価されていないが、こんなにもチャーミングに、そしてコンパクトなバランスよく仕上がり感があって、実に美味しいワインである。

2008
2007年より閉じこまった、少し清ました印象。果実香とベジタルさ、複雑味。アタックの味わいに猛々しい要素はなく、おとなしい印象だが、タンニンはやや荒い。まだ若く時間を必要としている。それが時間とともに綺麗なバランスを生んでくれるだろう。

2010
高い果実香、ジューシーな印象にほどよいオリエンタルなスパイスが混じる。最初の果実を楽しむ飲み方もできる感じで味わいの輪郭の強さ、葡萄本来のもつ、エネルギーを感じる。勿論、全然若くて待つべきワインであるのだが、時間とともにその美しい姿が花開くだろう。


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Saint-Estepheの物価の高騰は激しい。先日、Cos d'estournelの買収の話は記憶に新しいが、近辺のシャトーは次々に所有者が変わっている。一つ丘の向こうにある Château Montrose買収の金額は1haあたり、200万ユーロであると聞く。



          破砕からコンクリートタンクへの道順

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まとめ


 今回は Henri Duboscqという人物について書いたのであるが、実のところ、訪問中に彼は不在であった。まだ会ったことのなかった人物だったので、非常に残念なことではあった。しかし、このワイナリーに来れたことで、彼の人となりや思想を理解することができた。品質向上への信念。他者にはないアイデア。有機的アプローチの重要性への着眼。地道なワイナリー拡大の継続。偉大なる父親の仕事を見事に引き継ぎ、次世代へと繋げた、彼の努力は、彼のワインの中に宿っているのだ。
 さらに今回のBordeaux訪問において痛感したのが、Bordeauxのワインは私が考えていた以上にテロワール(土壌・風土・気候)に根ざしたワインであったことである。Saint-EstèpheからBordeaux市まで自転車で巡ってみたが、それぞれ砂礫質土壌の大地であるということは知っていても、それぞれの村の畑の違いは一目瞭然であった。砂礫の量、粘土質か砂質か、石灰岩の多さ、丘地、向き、土の色…。Arcins村とMacau村はその間の AOC Margauxからはずれているだけなのに、AOC Haut-Médocとしか名乗れないのは、土壌は砂質なのであって、Margauxのような重く真っ黒な土壌ではないからである。村ごとのアペラシオンを分つ、丘地と溝地の差異、そのほんの少しの差がワインの格を分ける。ここBordeauxにおいても、テロワールがワインの個性を生んでいるのだ。
 なぜ、Saint-EstèpheにMerlotが適するのか、それは粘土が多いからである。水分ストレスを嫌う Cabernetよりも熟成の早いMerlotの利点。格付けのあった1855年ごろは、この地に Merlotを植えると言う慣習がなかったから、その実力は発揮されなかった。旧来の枠組みに囚われない自由なワイン造りを続けて来た、この村のワインは今でこそ、Cru Bourgeois の宝庫であると見なされ、その品質の高さは他にひけをとらない。Haut-Marbuzetのワインがその代表的な一例で、2009年にロンドンのワイン商によって行われた非公式な格付け見直しにおいては、四級格の評価を得たのである。



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今回の訪問の際に案内していただいた、Patrick Pazeciere氏。Hervé Duboscq時代からカーヴで働いていて、Haut-Marbuzetのすべてに通じている素晴らしい方だった。
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[ 2014/08/11 01:31 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(1)

Visit Report;36 Mas Julien

 Montpellierから西に車を30分も走らせると、標高900mにも達する、Pic Saint-Baudilleの山が見えてくる。

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Mas Julienの畑と、奥に見えるのはPic Saint-Baudilleの頂き

 カラカラしたLanguedocの大地において、そこだけ白い雪の残った、幻想的な山。麓に近づけば Terrasses du Larzacという、葡萄畑が辺り一面広がる場所にやってくる。BourgogneやBordeauxがそうであるように、この地には深い葡萄栽培の歴史が残っているのだ。この産地は、32村、500haに及ぶ地区を合わせた、AOC Languedocの一地区で、現在AOC昇格の申請を行なっている。実際、Languedoc中でも、歴史的に重要な産地であり、西暦782年に、この地にSaint Benoît d'Aniane(聖ブノワ)が修道院を数多く建設して、葡萄栽培の為の宗教的基盤を作り上げて以来、ワインの生産が盛んであった。この地には、Mas de Daumas Gassac, Grange de Père,Domaine de Montcalmèsなど、Languedocを代表する蒼々たる造り手がひしめいている。その中でも、私が古くから訪問したいとつねづね思っているワイナリーがあった。

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 Mas Julien。
 Languedocでも洗練された作風のワインを生む造り手で、Terrasses du Larzacの一つの村、Jonquièresに居を構えている。1985年、Olivier Julienは協同組合に葡萄を売っていた父親の畑の葡萄から、自ら瓶詰めをする決意を固めた。20歳でしかなかった彼が独立した折には、彼の周りでドメーヌを起こしていたは、AnianeのMas de Daumas Gassacのみ。それが今では20haもの畑を所有して、多くの星付きレストランにリストオンされる造り手として認知されるに至った。現在でこそ、Terrasses du Larzacには優秀な生産者が独自にワインを造ってはいるものの、彼はこの地における高品質ワイン生産のパイオニアであったのだ。

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      Olivier Julien氏と叔母のMarie Julienさん。彼女は主にデスクワークを担当。

 何よりもまず、L'état d'âme de Mas Julienというキュヴェには昔から愛着を覚えて来た。瑞々しくフルーティーで飲み易く、それでいて、熟成能力をそこそこもった、素晴らしいワイン。年ごとにエチケットの内容を変え、それぞれのラベルにはフランス語の詩文で飾られている。「L'état d'ameは セカンドワインではなくて、別個のワインと言えます」と、言われて、正にその通りであると首を縦に降った。ワインの完成度自体が高いからこそ、Bordeaux式「第二のワイン」ではない、違ったスタイルのワインとして独立した地位を占めている。そして、キュヴェ・Mas Julienは、CarignanとMourvédreに、Syrahをブレンドしたもの。若い内は非常に閉じた、長い長い熟成を可能にする、スケールの大きなワイン。古いヴィンテージものを昔から試飲しているが、その若さにはいつも驚かされる。そして2006年よりリリースした新しいキュヴェ・Carlan。今までのワインとは全く異なった土壌の、SyrahとGrenacheのブレンドで、爽やかでストレートな酸味と、鋭角な味わいをもった個性的なワインである。

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従兄弟のNicolas Julien。Masとは「家」を表す意味だから、Mas Julienは「ジュリアン家」という意味になる。そこには、家族経営のワイナリーという意味があるのだ。

 今回の訪問で、Olivierの従兄弟 Nicolasに主立った葡萄畑を案内してもらった。彼は昨年から働き始めたばかりだそうで、これが初めてのワイナリーにおける仕事だという。それでも葡萄畑についてよく精通していて、この造り手の将来を担う若者であるようだ。ワイナリーは、彼を含め5人で働いているという。その日は非常に快晴で、気持ちのいい空の下の訪問になった。こんなに畑仕事をするのに絶好の機会なのに、時間を裂いてもらうのに、少し恐縮な気持ちになった。そういえば、Languedocの他のワイナリーも、取材を申しでた人間にはとても親切であった。何もしなくてもワインが名前で売れる他の産地とは違い、この地方は、まだまだ認知の低い産地なのであるという雰囲気が感じられる。

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Jonquièresの畑。収量は28-30hl/haであるという。

最初に案内された Jonquière村の畑は標高100m足らずの場所で、なだらかな傾斜であるものの、ほとんど平らな見晴らしの良い立地。第四紀に堆積した粘土質石灰岩の土壌で、石ころが多く見られる。先日に訪問したCostières du Nîmesのテロワールとは、時代は近いはずだが、堆積している土壌の構成が根本的に違う。白ワインと、キュヴェMas JulienとL'état d'âme de Mas Julienのワインはこの地から生まれる。MourvédreとCarignanが主に植えられて、他の造り手と同じく、CarignanのみGoblet式剪定法で、他の品種はCordon式剪定法か、Gobletでワイヤーを張る。Carignan以外の品種は風に弱いからワイヤーを張るのであるが、それだけでなく、「仕事の効率化を上手く上げるため」でもある。ワイヤーで整枝することで、より効率的な機械化作業が可能になる。他にも機械で仮剪定を行なってから剪定するそうである。剪定がスムーズに行くので、私が訪問した二月中旬にはほとんどの剪定が終わっていた。

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      Jonquièresのテロワール。さまざまな種類の石灰岩が入り交じっている。

さて、白ワイン用には固有品種のCarignan Blancの他、Chenin Blancも植えている。Chenin BlancのようなLoire地方の品種がこの地にあるのは意外なのだが、実は他のLanguedocのワイナリーもしばしばこの品種を植えていることが多い。ブレンドされるChenin Blancは、ワインの味わいにおいて重要な酸味を与えてくれるという。こんな暑い産地でも上手く育つのかという問いには、全く問題ないとの回答であった。出自がどこであるかよりも、結果が大切なのであり、これからLanguedocにどんどん根付いて行く品種になるのであろう。

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Saint-Privatの畑。どこか、Toscanaのテロワールに似た印象のある場所である。

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 続いて車を走らせ、約20分、Pic Saint-Baudille山地の切り立った山道を横切り、山の向かい側のSaint-Privatの地にやってきた。Olivier Julienが、新たに購入した標高200-400mに位置する葡萄畑に達する。見晴らしの良い、その丘から広がる石ころ混じりの畑は美しく整理されている。標高の高い石灰岩の土壌であるが、植えられているのは、低地と同じくCarignan。それにしても、剪定が終わってないが、さすがにこれだけ離れた場所に畑があると、なかなか滅多に来られるものではないと思った。しかも、悪路の続く、山の中で、Nicolasの車が四駆であったにも関わらず、ヒヤヒヤさせられる山道であった。

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近年に白葡萄であるViognierを植えたそうだ。Languedocでは、沿岸部に比べ、内陸部の方が気温が低くなる。特に昼夜間の気温差は、沿岸部で11度しかないのに対し、内陸部では13-14度に及ぶ。夜間の冷たさが、ワインの味わいに繊細さと複雑さを与えるのである。


続いてもう一つの畑に移動すると、一面が赤銅色の畑が見いだされた。きめ細かい赤い砂の混じった砂岩、そして、同じく赤銅色のシスト土壌。「石灰土壌は、ワインに深みを、砂岩土壌はワインに酸味を与えてくれる。しかし、それをブレンドしても上手くは噛み合ない」為に、粘土質石灰の区画をMas Julienにブレンドする一方、砂岩とシスト土壌の畑のものを独立して使ったキュヴェCarlanをリリースした。Carlanの品種はSyrahとGrenacheのブレンドである。「Saint-Privatの畑は、標高400m級の高い地に位置するということもあって、熟するのが遅い。だから我々は主にSyrah品種を植えています」。なるほど、Côte Rôtieがそうであるように、Syrahにとって理想的な環境はシスト土壌であるとは容易に想像できる。赤銅色のシストは、太古の岩石で、Permien(ペルム紀)のものである。各世界のシストの崖がそうであるように、非常に切り立った急斜面の崖が続き、良質のワインの生まれえる、ある種の雰囲気がここにはある。Grenacheは、Jonquièresのような低地でこそ、暑すぎて育たなくなりつつあるが、このような高地であれば、よく育つのだという。だから、ワイナリー近くのGrenacheはだんだんと引き抜いているそうだ。Grenacheには暑すぎる、というのは中々興味深いが...。

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Syrahを植えられた場所。この辺りの区画の収穫はいつも遅くなる。「2011年は非常に変な年になりました。8月の後半に始まった収穫が、区画ごとに熟すスピードが非常に異なっていて、本当にいつどの区画を収穫するのか考えあぐねました。結局、終わったのは10月の後半でした。」

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      赤銅色のシスト。


帰り道は全く別のルートの西周りでJonquièresに戻ったのだが、辺り一面の景色はまったく先とは異なっていた。赤い砂に包まれた風景。Permien紀のシストと砂岩を含む赤土で、この地では"Ruffes"と呼ばれている。幻想的な赤い大地。表側の道が白い石ころ混じりだったのと打って変わったような風景に出会うと、この世界にはまだまだ色々な大地が広がっているのだと関心させられる。このように、ここTerrasses du Larzacは非常に複雑で入り組んだテロワールをもっている。全体的には、氷河期の時代に運ばれた、石灰岩や、シリカ質粘土の混じった土壌である。さらに場所によって、 Permien紀の砂岩、バサルト(Octon,Mérifons,Rabieux)、シスト(Saint-Jean-de-la-Blaquière)、第四紀の堆積土(Saint-Saturnin,Jonquière)、中新世の石灰砂岩(Saint-Guiraud,Giganc,Aniane)、赤土の石灰岩(Montpeyroux)が混じった複雑な様相を呈している。

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      Ruffes土壌の大地。私の友人はこれを火星のような光景だと云ったが、言い得て妙。


Dégustation en bouteilles

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すべての赤ワインはDemi-Muidsで一年、そのあと、Foudreで一年間のエレヴァージュ。白ワインもDemi-Muidsで一年寝かせた後、一端Cuveに移し、2-3ヶ月後の10月に瓶詰めする。白はMLFを行なわない。樽の上についているのは、自動的にウイヤージュできるシステム。これで、酸化をかなり抑えることができる。

Mas Julien Pays d'Hérault Blanc '11
とてもアロマティック。フローラルで純粋な香り。軽く樽香が香り、あくまでも優しい味わいを持っている。フレッシュかつボリュームがあり、素晴らしいバランス。このヴィンテージの白ワインには期待させられるものが多い。60%Carignan Blanc, 40%Chenin
Mas Julien Terrasses du Larzac Rouge '10
まだまだ閉じた印象。まだその美しさを存分には見せてくれない。Syrah的なアロマが強く、スミレ様のアロマティックな香り。タンニンは粗くなく、柔らかく、美しい。40%Carignan(平均樹齢50年),40%Mourvédre,20%Syrah。Carignanの柔らかさとSyrahのアロマ、Mourvédreのテクスチャーを上手く表現した、Languedoc屈指のGrand Vinである。
Mas Julien Terrasses du Larzac Carlan '10
香りは全く閉じこまった印象。Syrah,Grenache。Mas Rougeと違い、アロマの強さは身を潜め、ただ閉じこまっている。獣臭さ、鉄分を思わせる香り。香りは強い酸味に切れのある、Schiste的な味わい。柑橘的なニュアンスもほんのりと加わる。このキュヴェはまだ未完成であるが、将来性を感じさせるワインである。
Mas Julien Terrasses du Larzac Rouge '08
緻密。閉じているのだが、圧倒的なポテンシャルを放っている。味わいのバランス、エレガントさ、曇りなく、汚れなく、艶やか。タンニンは有るのにかなり柔らかい。デキャンタージュによって僅かな個性が開かれる。鉄分のアロマ、スミレ的な、レザー的な魅惑。

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「2010年は冷涼だったので偉大なヴィンテージになった。2011年は平均的な年だね。2012年は果実味があって、飲み易い年になりそうだ」

 私が、この造り手のワインを評価するのは、まず、そのワインのスタイルの明確さである。それぞれのワインが、はっきりと異なったスタイルを持ち、ワインごとの土地ごとの個性を鮮明に表現している。そしてどのワインもとてもエレガントである。繊細なワイン造りに必要不可欠な努力を続けている。2003年から選果台を導入し、葡萄は完全に除梗する。GrenacheやSyrahのように梗が強くて、除梗しにくい品種も、きっちりと梗を除く作業を徹底する。「葡萄についてるてんとう虫や葉を除く意味でも重要ですね」。さらに、「2008年ごろから抽出を抑えて、さらに柔らかいワインを作るように志向したので、Mas Julienの赤も昔よりも飲み易くなっているといえます」というように、より繊細なワインを作ろうという努力が絶えることがない。

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      ブレンド用のステンレスタンク。



総括

 どこの地方においても、話題にあがる造り手というのは、何かしら似たようなオーラを持っている。自分たちのワイン造りに対して強い信念を持っている。どんな産地にもこのような信念をもった造り手がいるものだ。彼らは、ワインというものをただ単に生活の糧としてではなく、アートとして捉えている節がある。勿論、栽培と醸造は、重労働であるにだけでなく、天候任せの辛い仕事である。収益を考えない農作業はありえない。しかしだからといって、金儲けだけをしたいのであれば、協同組合に葡萄を収めていれば良いだけの話である。何故、苦労してまで自分で瓶詰めして、自分のワインがジャーナリストや消費者にどのように判断されるかを一喜一憂しなければならないのか。以前、Champagneのある Récoltant Co-operateur(協同組合農家)を訪問したことがある。彼らの家は大変綺麗で、豪勢、裕福な一軒家に住んでいた。息子、孫ともに健康で、人生の残りを不安なく過ごしているように感じられた。ある一種の理想の生き方を過ごしているようだった。
 Olivier Julienは 28年前に自ら、葡萄を作り、ワインとして生成し、自分の名で瓶詰めする覚悟を決めた。生活の事を考えれば、協同組合に葡萄を売っていた父親の方が安定した人生だったのかもしれない。Languedocというマイナーな産地で、一から始めようと考える生産者は皆無だったのだ。土地に対する自信があまりにも希薄であるためである。ワインは、自然が我々のために贈ってくれる、大地のメッセージである。しかしながら、それをより良く、正しいカタチで生成するためには、「人」の力が必要である。テロワールをワインに表現する「人」の行為こそは、ある種のアートである。 蓋し、Languedocでも素晴らしい個性を持ったワインが作れるのだという、その信念をもった造り手が生まれない限り、大地のメッセージは決して表現されることはない。まさに Olivier Julienはこの見放された土地の価値を引き出した、最初の開拓者であった。彼の努力は、少しづつであるが、認められ、理解され、そして、この30年間で自分で瓶詰めする生産者がどんどん増えていった。それは、彼らパイオニアの発掘した Languedocの個性が世間に認知されるようになっていったためである。 Terrasses du Larzacというテロワールは、今でこそ、AOC Languedoc(Côteaux du Languedoc)の中の地区名でしかないが、将来的にAOCとして独立する間際にまできている。このような新たなる地方の価値の発見・保護である、AOCへの昇格という事象は、実に彼ら「人」の力のお陰なのである。

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      新しい植樹のためには、自分たちの畑でマッサル選抜した枝を使う。
[ 2013/03/03 16:41 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(0)

Visit Report;35 Domaine Marc Kreydenweiss à Manduel

Visit Report;35 Domaine Marc Kreydenweiss à Manduel

 Alsace初のビオディナミストとして知られるKreydenweiss家は、1999年に南仏Nîmesから10kmほど東のManduelに葡萄畑を購入した。以来、この一家は二つのワイナリーを切り盛りしている。当主の Marc Kreydenweiss自ら、Manduelに移り、妻の Emmanuelle, 三男 Jean, 長女の Julietteと共に新しい人生を開始した。私は2011年に、AlsaceのKreydenweiss家で働いていたこともあり、Marcは元パトロンでもあったわけだ。Jeanとも既知であり、彼がAlsaceにいた時に、一緒に働いていた仲でもある。以前から、機会あれば是非とも訪問したいと思っていたワイナリーだった。

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Marc Kreydenweiss。Alsaceワイン界のきっての知識人。それにしてもアルザス語なまりでフランス語を話す彼が、ラングドック方言で話すフランス人と働くのは少し可笑しい。

 Costières de Nîmesというアペラシオンから彼らのワインは生まれる。「Costières」とは溝を意味する言葉で、北から南へと流れるRhône河が、地中海に流れる最後のデルタ地帯を称した言葉として用いられる。なだらかな丘だが平地に近く、標高50mの穏やかな勾配が広がる。
「ここの平地をみてごらん、今は、荒れた不毛の地に見えるかもしれないけれども、ずっと葡萄畑が広がっていたんだ。それが4-5年前には、すべて打ち捨てられてしまったんだ。この地では、だんだんと葡萄栽培に適さなくなっているのかもしれない」車で迎えにきてくれた Jeanはそう語った。
ここより南の Languedoc全体の地区において、栽培面積が年ごとに減少していて、その一例を垣間見た気がした。

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   樹齢100年にも達するCarignanの自社畑。ちなみに、Châteauneuf-du-papeの葡萄を買うのみで、他はすべて自社畑。

 Nîmesを車で離れること約15分ほどして、畑の真ん中に建てられた一軒家に到着した。20haにもなる葡萄畑とオリーヴ畑の真ん中に、Marcの築き上げた夢の楽園がそこにあった。ドメーヌの周りはすべて自社畑で、Goblet仕立てとCordon Royat仕立ての葡萄の木々が見いだせる。
 畑を見ながら、Costières de Nîmesというアペラシオンについて思い返した。いつも試飲会で、この地のワインを飲む度に、がっかりした記憶しかない。薄っぺらで、味わいの生彩に欠いた印象しか残っていない。このアペラシオンはなくてもいいのではないかと本気で自問自答したこともあった。平均収量57hl/haという高さも品質の低下を招いているのだろう。しかし、そのような気の迷いを、一瞬にして振り払ったワインに出会った。それが、Marc KreydenweissのPerrières 1999であった。彼のファーストヴィンテージのワインである。試飲したのは確か、2007年ごろであっただろうか。素晴らしい熟成を経て、円熟を迎えた南仏ワインの秘められた力を、私に見せてくれた。

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Costières de Nîmesは赤ワインの産地と思いがちだが、比率は赤52%、白8%、ロゼ40%と、ロゼの比率は非常に高い。

 彼が Costières de Nîmesに来て以来、一躍トップワイナリーとなったのは、アルザスで培った厳しい醸造哲学があったからこそである。Marcが持ち込んだのは勿論、ビオディナミという農法である。自然のリズムを尊重し、ワイン造りの基礎とする手段。有機肥料のみを使用し、SO2の使用も最小に抑える。月カレンダーに従った仕事の段取りを心掛ける。そしてそれだけでなく、優れたワイン作り基本として、6つの黄金律を守っている。1) 収量をコントロールするための短い剪定、2) エブルジョナージュ、 3) エクラリッサージュ、 4) 風通しのためのエフイヤージュ、5) 選果しながらの手摘み収穫、6) 除梗した後の選果、である。

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地図左側の崖の上からLanguedoc、右側の断層の下は、氷河期のRhône河の堆積物の影響下にあることが理解できる
(Source: http://www.costieres-nimes.org/content/index-35896.php)


1986年からアペラシオンに認定され、現在3482haの面積を持つCostières de Nîmesは、厳密にはLanguedocのワインではない。行政的にはLanguedocの中に位置してはいても、地勢は明らかにCôtes du Rhôneの影響下にある。本によってRhôneに入れられたり、Languedocに入れられたりと非常にややこしいが、2006年よりCôtes du Rhôneワイン協会の管轄下にある。土壌は、Châteauneuf-du-papeや、Hermitageと同じく、鮮新世の氷河期にRhône河から流れて来た、様々な石ころ(Galet Roulée)によって形成されている。鉄分を多く含んだ赤い粘土の土に、数多くの岩石の石ころが覆い尽くしている。Languedocワインはその少し上方、Nîmes市にあるNîmes地溝の丘の上から始まる。遥か昔、気の遠くなるような昔に、漸新世から中新世の間の地殻変動によって分たれた違う土壌。Nîmes北部の隆起した土壌は白亜紀の純粋な粘土質石灰と泥灰岩の土壌が残ったのに対し、その下部は、地核変動の後の鮮新世に、Rhône河の運んできたより北の岩石成分の堆積物で満ちている。実際のところ、 Manduelから、最初の LanguedocのアペラシオンのLangladeまで、約20kmしか離れていないにも関わらず風景はまったく異なっている。標高が50mと低いことも相まって、より温暖な地であるばかりでなく、優れた排水性を持つGaletを多く含んだ、Costière de Nîmesは、標高が200mのLangladeよりも構成がズッシリと重い。それでいて爽やかなのは、地中に水分を保有する粘土が豊富だからである。さらに多種の石ころの持つミネラル分に富むためにより複雑な味わいを与える。

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   Nîmesの絶壁はおよそ10m位だろうか、しかしこの断層の差こそがLanguedocとRhôneのワインの境界となっているのである

「Galet roulé はRhône河が運んできた様々な土地の岩石だ。石灰だけじゃなくて、石英や、シレックス、それにヴォージュ山脈の砂岩すら見つかるから驚きだよ。実にこれらのGaletがワインに大切なミネラルの味わいを与えてくれるんだね。」 Marcはこの地の驚くべき多様性を力説する。Galet Roulée(石ころ)は、非常に長い年月を越えて、激流に流され、転がりおちてツルツルまでに丸まった岩石の総称である。だから、色々な原料の石が存在し、それぞれが多様なミネラルを含有しているということである。さらに優れた排水性を持っている。それと同時に、地下には優れた保水性を持った赤い粘土質の土壌が存在する。「Galet Rouléeの土壌という点では、Châteauneuf-du-papeにおいて、最も複雑な味わいをもったワインを作る事が出来る。Costières de Nîmesは他に比べ、よりChâteauneuf-du-papeに近い土壌である事は間違いない。しかし、もっと鉄分に富んだ地質で、それがワインにもっと多くの色調を与える。しかも、この土地は非常に肥沃だ。何もしなくても、収量は100hl/haに達するんだよ。だから、収穫量を抑えよう、濃縮した葡萄を作ろうと努めないかぎり、決して品質に優れたワインができることはないんだ」

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   一つの畑で見つけ出される Galet roulée。石灰、石英、シレックス、そして遥かAlsaceの地から姿を変え流れ着いた砂岩。

 収穫量が高く保たれているならばと、それと関連して、最近の南仏で盛んに行なわれている灌漑について聞いてみた。
「灌漑することは非常に馬鹿げたことだと思っている。この地は灌漑などしなくとも、多くの収量を約束されているのは数字を見ればわかることだ。栽培家は自分たちの最低限の収入を守るための保険として灌漑を行おうとしている。優秀な造り手は灌漑のような、土地の味わいを損なうことは絶対にしないものだ。というのは、葡萄の根が伸びようとするのは、適度の水分要求ストレスがあるからで、水が常に与えられるようになれば、葡萄の根は活動をやめてしまうだけだ。葡萄畑に灌漑を施すという事は無個性はワインを作るという事に等しいことだ」と、灌漑に対しては断固として否定的である。「もしも灌漑が必要な状況になるのならば、そこは葡萄を栽培するのに適さない場所になったと判断すべきだ」

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Nîmes上部の先の断崖の上部で見つけられる白亜紀の石灰岩の壁。もともとオレンジがかった岩石だが、太陽にさらされた部分は黒ずんでいる。

 各テロワールには、それぞれに相応しい品種がある。長い天候の変化、風土の変化に見合った、品種が見つけだし、選ばれてきて今に至っているのである。Kreydenweiss家にも非常に沢山の品種がある。Carignan、Grenache、Syrah、Mourvédre。
「この地に適する品種はMourvédreやGrenacheであると思っている。Mourvédreなどは中世にも既にあって、Le plant de Saint Gillesと呼ばれていたんだ。Grenache100%はブレンドして初めて力を発揮すると感じる」
しかし逆に、Marcの言っていることから、本当に作りたいワインのイメージと、現状の品種から作られるワインには違いがあるように感じる。Grenacheなどが適正であるとは信じていても、彼のワインの主力は二つの単一葡萄ワイン、Ansata(Syrah100%)とKa(Carignan100%)であるのだから。「百年以上生き残っているCarignanを使ったワインを作ることは、今の流行だね。しかし年々、老衰で、古樹は死んで行くが植え替えるつもりはない。それでもこれらの樹を守って行くことはとても重要だと感じる」

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   Goblet剪定による畑。下には、Galet Rouléeがびっしりと転がっているのを見て取れる。

「風の強いこの地でも、Goblet剪定を行うのは、それが理に適っているからだ。Carignanは、枝がまっすぐに伸びる品種で、ちょっとの風が吹いてもびくともしない。むしろ、この地に来た時にCarignanを違う剪定にしようとして酷い失敗をしたものだ。葡萄によっては枝がまっすぐ伸びるものと、横に落ちて行くものとあって、それぞれは異なった成長をするのである」「Mourvédreなどは、Gobletだが、ワイヤーを設置して、そこに括り付ける。SyrahとGrenacheはCordon。」

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   アルザスから持って来たフードルも用いる。コンクリートタンクで発酵し、赤はバリック、アルザス式フードル、Demi-Muidsなどを使用する(全除梗)。白はステンレスタンク(MLFは行なわない)。

 醸造において彼は、ブレット(ブレタノミセス)の問題について一番注意を払っているという。ブレットは、悪性の酵母であり、主に葡萄(特にCarignan)に存在する。少量であれば、ワインに複雑味をもたらすが、これが支配的になることでワインの味わいを大きく損なってしまう。Emmanuelはこう語る。「ここ数年の経験によって漸く、ブレットの発生の条件をつきとめてこれました。低温で発酵を始めることで、他の自然酵母よりもブレットの量が多くなるのです。発酵をすぐに始めないで、安置しておくことが危険なのです。低温マセレーションなどといった方法は、ブレットの生成を助長してしまうのです。もはや我々は低温で葡萄を放置することはなくなりました。ブレットを発見した場合は、即、温度調節をして対処します」。ブレットは何もRhône周辺に限った問題ではない。「Bordeauxでも、Bourgogneでもブレットの危険性はあります。最も、他の地方ではブレットの危険があれば、酵母を殺そうと処置するのでしょうが。我々、ビオディナミを行なう者にとってはブレットの量が多くなればアウトですので、定期的にチェックすることが必要になります」

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Dégustation en barriques(樽からの試飲)


Carignan '12: 還元香が強く香る。シンプルな味わい。まだまだワインとしての体裁は整えていないといった恰好。
Mourvédre '12; Carignanに比べ、還元はより弱いが優しい味わい。それほど主張するような力強さがあるわけではない。キュヴェGrimaude用のワイン。
Merlot '12: アロマティック、より男性的で、荒削り。味わいは今最も良いが、余韻と構成感に欠く。
Grenache '12; 甘さ、ストレートな味わい。濃密な濃さを持つわけではない。より丸く繊細になっている。
Syrah (barrique 225l, pour Ansata) '12; スパイシー。レグリッス。味わいの深さ。がっしりと複雑な味わいを残す。非常に品質の高いものであると知れる。
Carignan(demi-muids pour KA) '12; 強く、あと引く余韻の長さ。果実味の出方はSyrahのように派手に広がるわけでないのに、真っすぐに香る。伸びやかで綺麗。流石に100年生きたCarignanの濃度は違う。

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   Carignan用のDemis-Muids。後ろは発酵用のコンクリートタンク。

Dégustation en cuves (juste avant de la mise en bouteilles)(タンクからの試飲)

Grimaude '11: 味わいの一体感が整い、瓶詰めの準備は整っている。複雑ではないが、美しい果実味があり、心地よい。フルーティー。
Perrières '11: 統制感のある味わい。バランスよく伸びる。「しかし昔と違って、今では最良のパーセルのものを使っているわけではない」為に、昔のPerrièresが持っていた味わいの深さが少し減った。Perrièresはもはや、昔のものと同じ熟成能力を秘めるわけではない。
Ansata '11: とてもフルーティーだが、素晴らしい品性のある味わい。'12にあった強いスパイス感が抑えられている。ハリがあって、強い伸び。なぜ、タニックさがあまり出ずに、優しく丸い味わいがでるのかという問いに、「それは、'11年からファーストプレスのジュースのみを使うことにしたから」なのだと言う。「残りのプレスは格下のワインに使うのではなく、すべてバルク売りしている。こうした方が、自分の名前で造っているワインの品質を少しでも守ることができるからね。」
Ka '11; 丸く、Ansataよりもスパイシー。しかし、味わいの表現力に乏しい。

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Dégustation en bouteilles(ボトルからの試飲)

Perrières '10: やや、ぼやけた味わい。凝縮感に欠く。強い果実味があるわけでなく、バランスは良いが弱い。やはり、良質のSyrahがブレンドされないとリッチさを欠いてしまうのだろうか?
Ansata '10: 果実味の強さと、主張があるものの、まとまりに欠く。渋くなく、ただ重い。
Ka '10: '11とは違って、'10においてはKaの方がAnsataよりも好印象。この年までは、ファーストプレス以外のジュースを使用したAnsataは味わいに柔らかさが足らなかったからなのだろうか?
Châteauneuf-du-pape '08: ネゴシアンもの。100%Grenache。円やかで繊細。アタックの強さはなく、エレガントで軽い。Grenacha本来の赤果実がピュアに香る。浮遊感のあるChâteauneuf.。




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 何故、Marcはこの地を第二の人生の場所として選んだのだろうか?
別にAlsaceとは違った、ワインを作りたいのであれば、他にも産地はあったはずだ。BourgogneやBordeauxではいけなかったのか? 特にMarcはBourgogneのワインの大ファンである。昔はHenri Jayerのコレクションをしていたというし、今でも、素晴らしく繊細なワインを見つける度に「Bourgogneみたいだ」と言ってる位だ。
 しかしながら、今回の南仏のワイン産地の訪問を続ける中で少しずつ理解されてきたことは、南仏の産地は、まだまだ穏やかな変化を続けている地だということだ。パルク売り用ワインの産地、安飲みワインの産地でしかなかった南仏には未だ、BourgogneやBordeauxなどの産地の持つプレスティージュ感も、飛び抜けたエレガンスを持ったワインはまだ生まれていない(ほとんど無い)。一昔前こそ、新たな産地の発見という謳い文句で売られ続けてきて、その熱に浮かされた感じにひとまず落ち着いた感がある。それでもこの産地には強い可能性、未来への展望が残っている。BourgogneやBordeauxのワインの優良畑はすべて解明つくされ、ともすれば名前だけ先行した不埒なワインが作られ続けているのに対し、南仏の葡萄畑にはまだ未知の要素が沢山つまっている。今、この地で素晴らしいワインを作り続ける生産者は、もともとこの地に根ざした者であることが多いのに気付かされる。共同組合用の葡萄を造っていた父親や、他業種の者、そして他の産地からの移住。近年では Anne GrosとJean-Paul TollotがMinervoisでワイナリーを起こした事が記憶に新しい。南仏は大いなる可能性を秘めた場所である。しかしワイン生産の為には膨大な時間がかかる。結果がすぐに出ることはないのだ。まだまだ優秀とされる造り手の年の若さや、彼らのワインの実験的な性質が見て取れて、結論を急ぎすぎるべきでないと感じる。
 皮肉にも、Marcのファースト・ヴィンテージはすでに私の南仏ワインの印象を変えたわけであるが、今の彼が造っているワインがベストではないと感じてもいる。現在の彼のAnsataやKaは、Marc自身がこの地に最も適した品種を使っているわけでないことからも明らかである。本当の意味で、彼のGrenacheやMourvédreが育った時に、今のAnsataを越えるPerrièresが生まれるのではないかと感じている。何事も焦りは禁物なのであると思う。私はCostières de Nîmesのワインが未だかつてない高みに登り詰めることができる日がくると信じて、待ちたいと思う。Marcの第二の挑戦は、続く。


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資料
Jacques Fanet, Les Terroirs du vin , 2008, Hachette
Benoït France, Grand Atlas des Vignobles de France , 2002, Solar

ネット資料
http://www.kreydenweiss.com/
http://www.costieres-nimes.org/content/index-35896.php
http://www.vins-rhone.com/
[ 2013/02/20 01:32 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(0)

Visit Report;33 Au Bon Climat


Au Bon Climat 「なんて、素晴らしい畑なんだろう!」

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 2004年のアメリカ映画『Sideways』で、主人公のMilesが愛して止まなかった Pinot Noir。しかし、アメリカ産の Pinot Noirには、Bourgogneで生まれる Pinot Noirのもつ神がかりとも言える、この品種のアロマは出ないと思っていた。10数年前に一斉を風靡したOregon地方やSonomaカウンティから生まれる Pinotのどれもが、果実味ばかり突出して、さらにアルコールの高すぎるワインばかりだったからだ。Pinot Noirの優美さは、力の強さではなく、その繊細さにあると言うのに...?
 南カリフォルニアは、19世紀においては、葡萄の中心産地であったものの、フィロキセラの被害の後、ほぼ壊滅してしまった。今日の、Los Angelesにはかつて栄えたという大葡萄農園の影もない(少量ながら生産する造り手はいるが)。しかしながら、南カリフォルニアは再び注目を浴びて来ているようにも感じる。北部に対して涼しく(ヨーロッパと逆)、より繊細な味わいを生むテロワールを持つと再評価されてきているのである。映画の舞台となったのは、南部の Santa Barbaraカウンティであったのも注目すべきである。Milesが魅せられたPinot Noirは、南部のPinot Noirだったのだ。
 美味しい Pinot Noirは南カリフォルニアにもあるのだろうか、という期待を込めて、私は Santa Maria Valleyのワイナリー、Au Bon Climatを訪れた。頭文字でABCという覚え易い、しかもフランス語のワイナリーである。
 
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 Au Bon Climatは、1982年にJim Clendenenによって設立されたワイナリーである。フランス語で、「素晴らしい立地の畑」を意味する。約40の生産者の900エイカー(約364ha)の畑から、Bourgogne系品種のみのワインを生産する。Pinot Noir、Chardonnay、Pinot Blanc、Aligoté をSanta Barbaraカウンティのみの葡萄から生産し、その大部分がSanta Maria Valleyに位置し、その中でも最も優れたテロワールと呼ばれている Bien Nacido vinyardの内、300ヘクタールを所有している。

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 造り手の風貌が、ワイナリーの性格を顕していることは多い。当主 Jim Clendenenに出会った時に、すぐさま、この人物ありて、カリフォルニアでも異色の Pinot Noirが生まれるのだとはっきりと合点がいった。70年代ヒッピー風の彼は、ヘアスタイルの所為か、ロワールの名醸造家、故Didier Dagueneauを思い出されてならなかった。ワイナリーに入ると、彼は我々のために手料理を準備しているところだった。巨大なステンレスタンクが所狭しと並べられた巨大な部屋の一画に、ごちゃごちゃと煩雑に架けられたポスターやらアンティーク用品、調理場があって、彼は一人、フライパンをぐつぐつさせている。その端には長テーブルが置かれていて、従業員全員分の食事を造っているのだ。アメリカの企業はファミリー感覚なんだろうか?結局、我々も一緒に昼を御馳走してもらうことになり、ワインの試飲は食事を共にしながら行われた。他国のワイナリー訪問ではこんな機会はないだろう。他にアメリカのワイナリーを訪問したことがないのだから知る術もないのだが、アメリカの訪問テイスティングとはこんな感じで始まるのだろうか?

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    調理中のその人こそ...

 Jimがワインに目覚めたのは、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校を1976年に卒業した後、BourgogneとChampagneを廻ったことから。'78年には著名なZaca Mesa Wineryで働き、1982年に、Adam Tolmachと共に独立。Adamとは袂をわかったが、現在はQupé ワインのRobert N. Lindquistと共同でCLV(Clendenen Lindquist Vintners)という形で経営してもいる。Robertは主にビオディナミに焦点を置き、ワインはRhône系品種を植えている。

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Robert LindquistとJim Clendenen

「素晴らしい立地」のBien Nacidoの畑は、海岸沿いのエリア、Santa Maria Valleyの中でも、冷涼な気候で、日中は暑く、夜間は涼しいクリマを持つ。同じ冷涼な気候といっても、北カリフォルニアのPinot Noirの名産地のCarnerosとは全く逆で、夏は涼しく、冬は雨がちになる。さらに土壌は、火山性の土壌を地盤に、砂岩の層が広がる。Bien Nacidoの小高い丘には石灰岩に似た白い岩石が見られるが、似て非なるものであるという。「ヨーロッパのように古い時代に堆積した岩石ではなくて、比較的若い時代に堆積した砂と石が固まったものなんだ。でも石灰岩ではないけれども、堆積物を多く含んでいてミネラルに富んでいるんだよ」とのことで、更にその上には、河から流されて来た砂利や石ころが混じった流土質土壌を形成した。

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    Bien Nacido。丘地でも、所々、牛のための牧草地や、アボガドの畑が混じっている

 彼らは、Bien Nacidoの買い付け葡萄からのみでワインを造ることには飽き足らず、1998年には自分の畑を購入して、2001年からそこの畑のものもブレンドされるようになった。Le Bon Climatと名付けられたこの畑は、Bien Nacidoの畑から6km南の地点にあり、Pinot Noir、Aligoté、Pinot Blanc、Gewûrztraminerなどを植える事になった。樹間1m x 列間2mの1haにつき5000樹(1エイカーの1600樹)植えられて、なかなか急なスロープに畑が造られる。畑を案内してくれた醸造チーフのJim Adelmanによると、平地は肥沃すぎてワイン用葡萄には向かず、表土の浅い丘地にこそ品質の高い葡萄がとれるのだそうだ。実際に、30年前に彼らがワイナリーを起こした頃には、辺り一帯が葡萄畑であったが、今では平地の葡萄は引き抜かれ、替わりにカリフラワーが植えられているという。アメリカの優良テロワールの探索は今も休まずに続いているのだと理解できる。彼らの念願もあって、2003年より有機栽培の畑との認定も受けた。

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    Le Bon Climat。Pinot Noirのクローンは677,777,Pommardなどで、台木は樹勢を抑えるRipariaを使用。剪定法は収量を抑え易いDouble Cordon

 Le Bon Climatを探索していると、丘の下部の樹が沢山の植え替えられているのに気付く。聞けば、虫の害によって樹が枯れたためだという。Pierce's disease(ピアス病)という病気の為である。Grassy-winged sharpshooterという名の昆虫が、樹を齧ることによって、体内に持つヴァクテリアが感染し、その樹が死にいたるという今日のアメリカの葡萄畑が抱える恐るべき病害であった。しかも、この病気は、Bourgogne系品種が最も弱いとされているそうだ。虫の飛行距離が重要とされ、なるほど、川に近い平地部分の樹がほとんど植え替えられているのに対し、丘の上部の被害はない。その替わり、年間降水量が500mm程度と低いために、ヨーロッパのような湿度の高い地方で発生するベト病の害は少ないそうだ(ウドンコ病の害は少しある)。他にも、Leaf roll(ミーリーバグ)と呼ばれるウィルス性の病気や、更にはフィロキセラの危険も常に存在しているとのことであった。

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丘の下部、ピアス病の被害によって植え替えを余儀なくされた畑。


 涼しい土壌とは言え、土壌の排水性から、旱魃の危険は常にともなう。だから葡萄畑にはドリップ・イリゲーション用のホースが張り巡らされていた。訪問した当時は、雨が降っていたにも関わらず、周りのカリフラワー畑にも放水されていたのが印象的だった。

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    プレス機は空気圧式のようだ

 醸造は、Bourgogneにインスピレーションを得たものが多いといえる。除梗しない発酵を理想とし、完梗葡萄は大体、20%位使用するそうだ。さらに開放式タンクで発酵、野生酵母のみ使用する。補糖、補酸は極力控え、「2001年から、補糖、補酸、補水をやめた」そうだ。樽会社もBourgogne製で、François frère社のもののみを使用(時々、ermitageやtarransaultも使うが)。樽の木材は3年間自然乾燥させたものを好み、「短すぎても、長すぎてもいけない」、との事。エージング期間は長めである。ものによっては3年間、小樽熟成などを行ったりもする。澱引きは瓶詰め前に一回のみで、やはり亜硫酸をあまり添加したくないという姿勢を見いだせる。清澄に使うのは、卵白で、これが最もベストだとの判断だが、フィルター掛けは、価格の低いキュヴェしか行わないそう。このように、ワイン造りにおいて、極力、人為を廃しようと努力しているワイン製造法が理解しうる。どこの世界でも、良いワインは良い葡萄から、という鉄則が浸透してきたように思える。それは良い料理は良い食材から、というガストロノミーの流れの転換と期を同じくしているように感じるのだ。


試飲;

'11 barel simple

ABC Aligoté ; とてもフレッシュ。樽香をほとんど感じない、巧い醸造。ボディの強い、重いAligoté。
ABC(JC) Tokai Friurano : 品種の個性がとても顕されている。品性のあるボディ。エレガント。少しアルコールが強い。
ABC PN Sanford & benedict vinyard; とてもフレッシュで、フルーティー。アタック優しく、きめ細かい。10%完梗。
ABC PN Bien Nacido vinyard; 赤果実の柔らかさ、フレッシュな酸味。Sancerre に似る。
ABC PN Talley Vinyard; より複雑で、アロマティック。黒果実、皮のニュアンス。Gevrey的なアロマ。タニックである。
Qupé Syrah ; 典型的なSyrahのアロマ。スパイス、黒胡椒。フランスのそれよりもプラスのスパイシーさが加わった印象。口当たり柔らかい。
Qupé tempranillo ; 深いマチエール、 シナモン、刺々しいスパイスではない。ビオゆえのソフトな口当たり。


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Tasting white

Jim Clendenen Aligoté '10 : フレッシュでおちついたアロマ。バランスが良い。
Santa Maria Valley Hildegard '09 ; ソリッドでしっかりとしたボディ、深さ。樽香はやや強めについた印象。逞しいワイン。PG55%,PB40%,Aligoté5%
Santa Maria Valley Hildegard '05 ; 若々しさは減ったものの、鍛えた筋肉は衰えない、といった印象。少し酸化的なアロマが強くなっているが、持ち前の気迫で保っている。
Chardonnay Nuits Blanche 30 anniversary '10; 30周年記念ボトル。ワイルドで、樽香が強い(つきすぎではない)。スパイス感とミネラルが混じっているがギスギスしているわけではない。
Chardonnay Nuits Blanche our way '04 : やや頂点を越えて、ゆるやかなスロープに入った感じを受ける。重くリッチ。


Tasting Red

Qupé Grenache '10 : Grenacheのアニマルフレーヴァーよりも、果実味が強いタイプ。しかし、腰の重さはなく、柔らかい。
Qupé Syrah '08: スパイシー、'11よりは落ち着いた印象。品種一つ一つの個性がとても出ていて興味深い。
Jim Clendenen Nebbiolo : '04 ; 青いこの品種特有の個性。イタリアのそれに比べると深みに欠くが、タンニンは強い。
Jim Clendenen Petit Verdot '06 ; ニュートラルな味わい、丸みがあってボリュームはそこそこ。「この地でCabernetとMerlotを植えても上手く熟さなくて、ピーマンっぽくなったりタンニンが粗くなってよくない。しかしながら、Petit Verdotは良い熟成をしてくれるんだ」

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PN Isabelle'10; エレガントな果実味。きめ細かさ。Gevreyの一級は斯くやと、思わせるアロマ。口当たりのアタックはやや強い。この娘の名前を冠したキュヴェは、全体のワイナリーの中でも最上の葡萄のものをブレンド。凝縮したヴィンテージ。
PN Isabelle '09; '10よりもより、熟成した印象で、落ち葉、紅茶のニュアンスが強くなる。IsabelleのほうがKnoxよりも丸い。
PN Knox'05 ; 閉じこまっている。しかしアロマには強い複雑性があり、熟成によって伸びるだろう。
PN Sanford&benedict '93 ; 空けた当初は少し抜けた印象だったが、時間とともに持ち直した。Fragileな個性。Terreuxで、円熟を過ぎた初老のワイン。とても落ち着いた。枯れたものの美しさ。Jimがワインに籠めた、恐らく、Bourgogneワインに魅せられた、夢がこのワインには詰まっている。この畑は、Jimによると、「カリフォルニアで最も冷涼なテロワール」

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 ワインの味わいは、非常に繊細さを重視している点に尽きる。アルコリックで、果実が出過ぎている他のカリフォルニアの造り手のワインとの印象は少なく、ソフトで優しいタッチが見て取れる。得に2009年は、涼しい気候のキャラクターが良く出ていて、世のBourgogneファンをも納得させる品質であると言える。Jim自身が単にBourgogne好きであるからこそ、こういうワインが生まれるわけではなく、このSanta Maria Valleyというテロワールが、このワインの繊細を生み出しているのだ。しかしながら、それはまた、Jimがこの場所で醸造をしようと決めた理由にもなるわけであり...。まさしく、かの地こそ、Jimにとっての理想の地、Bon Climatだったわけである。



まとめ、

 18世紀に南カリフォルニアから始まり、ワイン造りが中心であった南部から北部へとワイン造りは移行したのは、ただ単にLos Angelesに人口が集中したことが問題だったのではないのだろう。ピアス病の原因となる虫、Grassy Winged sharpshooterは、南部カリフォルニアに多いという。こういった虫の棲息する場所であったことも理由であったのだろう。そのピアス病の感染地帯ぎりぎりに面する Santa Barbara カウンティは、言うならばカリフォルニア最南部のワイン生産地でもある。そして我々は、常に葡萄が育つか、育たないかギリギリの環境でこそ、最高品質のワインが生まれるということを学習してきている。極限の環境下で生まれるワインだからこそ、彼の Pinot Noirは、あのフランスでしか出し得ないと感じていた、ミネラルの響きをワインの中に宿すのだろうか。カリフォルニアは、もはやニューワールドではなく、歴史を持った産地になりつつある、と感じた訪問だった。

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    他のワイナリーのPinot Blancで貴腐を残している。Qupéでも年によってはViognierの遅摘みワインを造る事があるそうだ

Au Bon Climat
P.O. Box 113
Los Olivos, CA 93441
Tel: (805) 937-9801
Fax: (805) 937-2539
Email: info@aubonclimat.com

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Bien Nacidoの畑
[ 2012/12/11 01:52 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(0)

Visit Report;32 Fattoria di Caspri -AlsaceとToscanaの狭間-


 イタリアは魅惑の地である。
ここフランスにても、イタリアに引かれてに、いつでも飛んでいきたい衝動に駆られる時がある。フランスにはない、ある種の魅力がある。豊穣な大地、温暖な気候、自由な気風、に満ちた素晴らしい国である。


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 ここフランスに住む人々にも、そう感じ入る部分があるようだ。イタリアのトスカーナでワインを造ろうと決心するにいたった一人のアルザス人がいた。
 ベルトラン・エブシガー(Bertrand Hebsiger)は43歳。もともとアルザスの三ツ星レストラン・ラルンスブール(L'Arnsbourg)でソムリエをしていたが、スイス人のオーナーからワイナリーを経営しないかと誘われ、2006年から転身してワイン造りを始めた。Firenze(フィレンツェ)から南に下ること約50kmに位置する Montevarchi(モンテヴァルキ)市のすぐそばの場所にこのワイナリーはある。当時アルザスにいた私は彼と出会ったことで、未知なる世界が開け、イタリアに行くための架け橋となった。ベルトランのワイナリーに滞在した一週間の記録から、Chiantiという産地の現状と、イタリア・ワインの課題点を探ってみた。


1, IGT Toscana


 初めて彼のワインを飲んだのは2011年の5月だった。当時私が働いてた、ドメーヌ・マルク・クライデンヴァイス(Domaine Marc Kreydenweiss)にて、彼のワインが試飲会に供されたのだ。彼はアントワーヌ・クライデンヴァイス(Antoine Kreydenweiss)の親友でもあった。彼のワインの'09は、非常にピュアで、深みのある味わいを持っていた。偉大なるBourgogneに匹敵する素晴らしい伸びのあるワインがそこにはあったのだ。あまりにも魅了されて、私はその夜の内に、彼のドメーヌで研修したい、と申し出たほどだった。

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 このベルトランの所有するワイナリーは全部で16ha。しかし、葡萄の作付け面積は7haである。しかも、半分近くは近年に植えたばかりで、まだワイン用に使われない若い樹が多い。
Chianti Classicoの境界線を少し外れるために、DOC上では、Chianti Colli Aretini ゾーンに属する場所である。しかし、彼は行政区画や、DOCには全く興味を示さなかった。

有機農法の盛んなフランスのアルザス地方で生まれた彼にとって、ワインとは自然な造りに基づいたものでなければならないらしい。しかし、現在のイタリア・ワイン界の主流は未だ農薬や、化学肥料、人工酵母に頼ったものであり、彼の理想とはほど遠いものであった。

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「60年代から、トラクターで仕事をするために植樹密度を上げたことで、長い成熟期間を必要とするSangioveseは熟さなくなった。だから他の品種をブレンドする必要性が増して、早熟のMerlotを植えるなどという風潮が広まっていったのさ」

Chiantiの現状を一言でこけおろした彼は、相当なニヒリストでもある。イタリア・ワイン界全体に対しても攻撃的ですらある。トスカーナに良いワインを生産する造り手は一人もいない、と看破して憚らない。どれほどの自信過剰なフランス人かと、敵も多いだろう。しかし彼にとって、良いワインとは、人為を徹底的に廃したものであり、限りなく有機農法に根ざしたものでなくてはならない。そういう造り手は現在のイタリアには数少ないということもまた事実である。


「大体、トスカーナには、フランスで言うヴィエイユ・ヴィーニュが存在しない。あまりにも農薬を使って畑をダメにした所為で、ワイナリーは毎年、毎年、葡萄を植え替えている。植樹して20年もしたら、引き抜いて、次の樹を植える。良質のSangioveseクローンを探すためだって? 素晴らしいクローンを探す事よりも、長く、古く生き残ることのできる樹を沢山残すことが品質にとって大切だということが、イタリア人にはわからないのさ」

このワイナリーは、標高250-400mの高地に位置する。「シストと花崗岩の中間みたいな」、火山性の片麻岩(Gneiss)土壌という、トスカーナでも非常に特殊な土壌を持ったワイナリーである。基本的に砂が多く、「乾燥するとコンクリートのように固まり、雨がふると途端に泥土になる」土壌である。薄茶色で中にシリカのようなものを多く含む点が花崗岩に共通するが、シストのように黒板状に割れる。かなり脆い石である。pHの値が高く(7.7)、アルカリ性の土壌である。キアンティ・クラッシコ(Chianti Classico)内のガレストロとは、厳密な意味においては異なるものの、かなり混同されて、同一視されてきたようである。

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Caspriの砂岩。


2、 醸造哲学


 彼はもともと農家の家に生まれたわけではない。ドメーヌ・マルク・クライデンヴァイスの居するアンドロー(Andlau)村の出身であった彼が、最初に職業としたのはレストラン業においてであった。アルザス北部のドイツのラインヘッセンにほど近い、ベーレンタール(Baerenthal)村の三ツ星レストラン、ラルンスブール(L'Arnsbourg)でソムリエを務めた。クライデンヴァイスの影響を強く受けたのか、彼が目指したワイン造りは有機農法のそれである。「まったく添加物を入れていない」と豪語する彼が求めるワインの理想は、所謂「Vin Nature(自然派)」である。今までソムリエであった彼が、いきなりワイン造りをできるはずもない。だからこそ、彼が支持を乞うたのは、やはり地元のワイン生産者であった。それは、ジュリアン・メイエ(Julien Meyer)という、アンドロー村の南約5kmに位置するノータルテン(Nothalten)の生産者であった。最も鋭角な自然派ワインの造り手として、アルザスでも名高く、彼のワイン造りの哲学に最も大きな影響を与えている。


「選択酵母やシャプタリザシオン、機械収穫をすら認める現在のビオディナミの認証制度については多いに疑問を抱いている。最近になってイタリアでビオの造り手が増えてきたと言うけれども、どうしてだかわかるかい? ビオで葡萄を造った生産者には、政府が援助してくれるという法律ができたからなんだ」。


イタリアのビオには懐疑的な彼の哲学は、フランスでも最も過激的な「ヴァン・ナチュール」派である。亜硫酸無添加、極力農薬撤廃、自然酵母遵守の、最も厳しい理想をもつワイン造りのもとでは、イタリアの有機農法など、ママゴトにしか見えないようだ。


「畑の間隔は詰めすぎてもよくないし、長過ぎてもよくない。トスカーナに平均的な列間3mなんていうのは長過ぎて、かえって仕事の邪魔になって意味がない」

 植樹密度は 6500-8500本/Haで、トスカーナとしてもかなり密度が高い。アルザスのそれに似ると言える。剪定法は、基本的にコルドンで、ムルソーのように、数年に一度、ギュイヨに変えることで、樹を若返らせ、病気を防ぐ。もっとも、アルザス人である彼は、ギュイヨでもワイヤーにアーチ状に固定するのだが。さらに、近年に植えたテラスにおける区画では、棒仕立てにする。

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     「サンジョベーゼは気温が問題ではなく、日光照射量が問題となる」


「トスカーナにおける最大の問題は、至る所の畑をブルドーザーで耕してしまったことだ。キアンティの傾斜は、自然なままではあんな風に平らな丘にはならないものだ。確かに仕事はしやすくなったかもしれないが、地中の微生物はもうここ50年は戻ってこないだろうね。もはや、農民が自分たちの手で切り開いたテラスはごく僅かになってしまった」

 2011年度の葡萄畑の状態を聞いてみた。
「予め月カレンダーで'10年は涼しくなるとわかっていたから、剪定の時に長哨を短くして葉を減らした。逆に'11は乾燥した年になるという予測のもとに、長めに残して葉を多く残すようにした。やはり予測どおり、'11は水不足に苦しむことになった。'07もとても暑かったが、冬の間に十分に水分を蓄えていたお陰で問題なかった。しかし、'11の水分欠如のストレスは深刻だった。地下水も干上がってしまったんだ。この年に植えた若木の生長が上手くいかなくて、8月末にあわててかんがい用ホースを通したのだけど後の祭りさ、半分を失ってしまったんだ」

 イタリアでは、フランスで売っているビオディナミ用の月歴カレンダーがなかなか買えないと苦笑しているが、幸運にも年に数回、アルザスとトスカーナを往復している彼には問題はない。

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2011年は若木の成長に苦しんだ。


 醸造は、解放式木製大樽で発酵。

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「サンジョベーゼをコンクリートタンクで発酵するのはよくない。還元的な発酵にしかできないからこそ、ミクロビュラージュのような人工的なテクニックに頼らなければならなくなる。大樽こそが、最も自然な酸素量を供給してくれるんだ」

 ピジャージュを足で行うが、'11からピジャージュよりもルモンタージュを重視するようになった「抽出をより軽くすることでワインのエレガントさが増した」という。


「樽香が嫌い」なので、醸造用には600lの小樽(ドゥミ・ミュイ)を使用。新樽率は低く、'09のみ樽を購入せざるを得なかったために使用。また、他者から旧樽を買うということはあまり良い事ではないと考える。他の造り手の不衛生で、違う味わいの染み付いた樽を使うよりは、自分たちで昔から使っている樽を使用することの方が重要だと考える。

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     醸造期間は15-22ヶ月。そして、その間に、SO2は全くいれることはない。




3、 テイスティング

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'11 (barrique)
Caspri Ciliegiolo : 黒果実、フローラル、強い果実。柔らかく、フレッシュ。タンニンを無視している。焼け付くようなタンニンではない。やや弱い。
Sangiovese(Rosso di Caspri) ; 色濃く、スパイス、アニス、MLF的。ギスギスしてバランス悪く、より苦く、還元。しかし、同じ畑の違う樽は、程よいバランスがあった。これらはブレンドされる。
Sangiovese VV(Poggio Cuccule): 黒果実、チョコレート、ビター、コアントロー、苦み、凝縮感、柔らかく、エレガント。
PN/若いSangiovese mix (rosso or 自家用 magnum):黒果実、ヴルーテ、チョコ、レグリッス、円やかで、広がりのある酸味、100%sangioveseでは出し得ない軽やかさ。「ピノ・ノワールは最も木陰の区画に植えたんだけど、'11は8月中旬に収穫したにも関わらず、潜在アルコール度数は16.7度まで上がったんだ」
Sy/Sangiovese: 黒果実、カシス、桑の実、肉、樽香。テクスチュアが美しく、まだ閉じている。


'10
Caspri Ciliegiolo: 酸味の高さと、獣っぽさ、タンニンはなく、口の中に溶けていく。「10度位まで冷たく冷やして、メルゲーズと食べると良い」とベルトランは言う。

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Ciliegioloは、樹勢が強く、房は細く、小さな種に、実は大きい。この品種を、未だに使っている造り手はもはや残り少ない。

'09
Caspri Ciliegiolo ; ガーネット、濁り気味で、赤紫のリフレ。ブラックチェリー、スミレ、ボンボン、スパイス、煮詰めた赤身肉。味わいは軽く、酸味高く、ジューシーでアエリアン。しかし良く熟している。単調で、軽快、野性的な味わいがフランス南部のGrenache的な印象を残す。
Caspri Rosso di Casspri;ガーネット、濁り気味で、赤紫のリフレ、照りのある色。黒果実、樽からくる杉のようなアロマ、ミント、葉巻、甘いスパイス、高級そうな皮、まだ閉じている。とても深みのある味わい。ヴルーテのように濃厚で、絡み付く酸味。タンニンはそこまで感じない。軽やかなアフターは、軽い土壌ゆえか。
Caspri Poggio Cuccule;ガーネット、濁りがあり、上記のワインよりディープな色調。赤い縁。フローラルで、カシス、ミント、甘いスパイス、樽香。'08よりエレガントさに欠く。より広がりのある優しい酸味。タンニンはとても強いが、とても熟れている。口の中で円錐型に広がっていく、変成岩特有のアフター(St-JosephやDouroのような)。まだ若い。
Caspri Syrah;ガーネット、濁りと照りがあり、赤紫の縁。鉄っぽさ、獣、桑の実、甘いスパイス、シガー。甘く、ジャミーなアタックが、それを支える酸味とともにバランス良くまとまる。タンニンは普通。St-JosephやCôte-Rôtie南部。

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「台木なんていうのはそんなに大した問題じゃない。ビオディナミをきっちりと実践していれば、葡萄は自然と土地にあった生長をしようとするのだから」


'08
Caspri Rosso di Casspri : 黒果実、素晴らしいタンニン。重たさも兼ねる。
Caspri Poggio Cuccule : 黒果実。こもった香り、甘みがあり、きめ細かなテクスチャー。Rayasへの一直線。

'07
Caspri Casperius : 凝縮感の強さ、閉じ込められた味わいの強さ。口の中一杯に広がるリッチさ。まるで爆弾のようだ。

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Casperiusの畑。非常に密度が高いが、これこそが、トスカーナの伝統的剪定方法だと彼は言う。


Luna Blu (vino blanco)
'11 紅茶のアロマ、フローラル、カリンコンフィ、ビター。バランスが良い。厚みがあり、強い。
'10 松やに、樽香が強いのは新樽から。時間が必要
'09 この年からスキンコンタクト。カリンコンフィ、色調濃く、分厚いワイン。苦み、力強さ。フルボディ。
'08(barrique) 蜂蜜、揮発酸、酢に近くとも、上手くそれを隠している。酸度が高い。瓶詰めマダ。しかし、長い熟成を経て丸みを帯び、素晴らしいバランスを獲得しつつある。


赤ワインはすべて、味わいのアタックが優しく、スムース、非常にリッチなのに柔らかい。非除梗というのも手伝ってか、Pinot Noir的、Grenache的なワインを生み出している。特にPoggio Cucculeの繊細さは、際立っていて、年々、品格が溢れ出て来ているようだ。
Luna Bluは特殊な白ワインで、非常に酸化香が強い。ベルトランが実験に実験を重ねて品質改良に努めている。


「トスカーナのワインは重たすぎる。一本のワインを一日に飲みきれないようなワインに興味はない」

近辺のワインには手厳しく、シャトーヌフ・ド・パープの「シャトー・ライヤス」を理想と語る彼のワインの味わいは、滑らかで繊細、そしてエレガント。強い印象があったサンジョベーゼも、タンニンが熟れていて、優しく口の中に溶け込み、のど越しの柔らかさ〜フランス人の言う飲みやすさ Buvabilité〜を追求したものである。



4、 総括

「ちょうど60-70年代あたりから、世の中の仕組みがおかしくなりだした。地元でとれる作物に見向きしなくなって、外国の工場で大量生産された安価なものばかりを食するようになることが問題なのさ。無駄な加工、無駄な包装、無駄な輸送、無駄な人件費と、無駄ばかりが増えて、結局は資源の無駄遣いが増えている」


 ベルトランは、戦う醸造家である。自分なりの視点から、世界中の仕組みを看取し、憂えている。マルク・アンジェリや福岡正信の思想に近いと思う。だからこそ、彼の目標は完全な自給自足のできる農場造りである。

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オリーヴ畑も多く所有。「1984年の寒波の所為で、トスカーナのオリーヴは死に瀕してしまったんだ。ごらん、樹が二股、三股に伸びてしまったのはその時の名残さ」


「自分の豚を持っているので、近所の農家にハムを造ってもらっている。そのかわりに、彼らのワイン造りと販売を手伝ってもいる」
「サクランボウやリンゴ、洋梨、ミラベルを植えた。いつかは祖母のように、全部を混ぜて蒸留酒を造りたいと思っている」


 こういった考え方や、哲学は、やはり、彼がアルザスに生まれたということと関係している。フランスでも、有機農法の考え方の強い地方であり、その考え方はよく体系化されている。だからこそ、そのノウハウをいかそうと努力している。トスカーナの現状を憂え、イタリア・ワイン界に絶望的な彼も、アルザス流のやり方で、それを変えようとしているのだ。「今は、次の世代に残すための努力が必要である」と言う、彼の挑戦は続く。


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シャンブルドットも営んでいる。豊穣の地、トスカーナならではの、ゆったり感がそこにはあった。



[ 2012/11/19 22:31 ] VR(Visit Report) | TB(0) | CM(0)



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